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進化するサステナブル投資=「複雑な執行」の時代に-シティグループのマクベイン氏

2024年05月07日 08時30分

シティグループのマクベイン氏シティグループのマクベイン氏

 米金融機関大手シティグループESG調査部門の欧州地域責任者のアニータ・マクベイン氏が来日した。持続可能な社会の実現を目指すサステナブル投資の現状と課題を聞いた。

-サステナブル投資の現状は。

マクベイン氏 サステナブル投資は、非常に複雑な執行の時期(A Period of Complex Implementation)に入っている。地政学的リスクが高まっており、2024年は世界各国で重要な選挙が行われる。インフレの見通しも依然として不透明であり、金利が「長期にわたって上昇する」可能性が高まっている。

 一方、サステナブル投資は進化している。一部の投資家は、地球に対する責任(Planetary Stewardship)を理解し、科学的根拠に基づいた対応(Science-based Approach)を実行している。非常に多くのビッグデータ(Unstructured-data)を集め、データ・サイエンティストを使って分析し、ノイズの中から重要なシグナルを特定し、それを投資の意思決定に組み込む作業をしている。

-投資家が注目するテーマは。

マクベイン氏 当行は「資本の流れがどのような分野に向かうか」について投資家に調査した。トップは「エネルギー移行(Energy Transition)」、次いで「気候変動(Climate Change)」、「生物多様性の喪失(Biodiversity Loss)」が浮かび上がった。2024年もこれらのテーマが焦点であり続けるだろう。

-今後の日程は。

マクベイン氏 2025年には、ブラジルで国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)が開催される。2015年に「パリ協定」が合意されてから10年の節目になることから、非常に重要なマイルストーン(里程標)になるだろう。また、国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」がターゲットとする2030年も目前に近づいており、脱炭素の取り組みを加速する必要がある。

-リスクの全体像は。

(出所)シティグループ(出所)シティグループ

マクベイン氏 投資やポートフォリオを考える際に重要になるのが、シティ・リサーチが生み出した「Risk to Resilience Nexus」だ。具体的には、まず「食糧の安全保障(Food Security)」、「エネルギーの安全保障(Energy Security)」、「水の安全保障(Water Security)」の問題がある。さらに、「気候リスク(Climate Risk)」、「生物多様性の喪失(Biodiversity Loss)」、「ソブリン・リスク(Sovereign Risk)」、「人間の安全保障(Human Security)」がある。

 これらのリスクがどのように管理されているかを理解し、企業がこれらのリスクを管理するための回復力をよりよく理解することが重要だ。

 さらに「リスクの中にいかにビジネスの機会(Opportunity)を見つけるか」に論点が移ってきている。

-今後の重要戦略は。

マクベイン氏 三つある。一つ目は、気候変動にビジネスの機会(Opportunity)を見いだし、それを水、食糧、エネルギーの安全保障に適用していく投資ソリューションだ。

 二つ目は、エネルギー移行(Energy Transition)を加速させるソリューションだ。例えば、輸送分野の電化や、再生可能エネルギーへの移行を促進する企業に注目している。

 三つ目は、脱炭素化が難しいと思われるようなセクター、例えば自動車、航空、鉄鋼、セメントにおいて、どのように脱炭素を促進していくかだ。

-今後の注目点は。

マクベイン氏 気候変動と生物多様性の喪失は、同じコインの裏と表という関係にある。気候変動を緩和するには、生物多様性を守るソリューションが必要だ。この分野では、森林の保護が重要になる。温暖化効果ガスの排出量をネットゼロにするには、ガスを吸収する森林の機能が不可欠だからだ。

 さらに、カーボンマーケットの機能が重要になってくるだろう。脱炭素を促進するセクターに資本を移転するメカニズムであり、経済的なインセンティブを与えることができる。

 

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