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三菱UFJアセット、プライベートアセットを強化=UntroD Capital Japanのクロスオーバー・インパクトファンドに参画、ディープテック企業等を育成

2026年10月02日 08時00分

(左から東苑氏、秋谷氏)(左から東苑氏、秋谷氏)

 三菱UFJアセットマネジメントは、ベンチャーキャピタルUntroD Capital Japan(東京、永田暁彦社長)のクロスオーバー・インパクトファンドに参画した。ファンドの運営を通じて、プライベート領域の知見を蓄積して運用力を強化するとともに、スタートアップ市場の発展とイノベーションの創出に貢献する狙い。

 参画した「UntroD クロスオーバー・インパクトファンド2号」は、ソーシャルインパクトを有するディープテック等の未上場企業に上場前のレイターステージから投資し、上場後も中長期的に株式を保有してさまざまな支援や助言を行う。

 三菱UFJアセットマネジメント プライベートアセット運用部長の秋谷武志氏と同部チーフファンドマネジャーの後藤高彰氏、UntroD Capital Japan取締役の東苑直樹氏とファンドマネジャーの田中隆也氏に話を聞いた。

◆プライベートアセット運用部を設立

-クロスオーバーファンドへの参画の経緯と狙いは

秋谷氏 三菱UFJアセットマネジメントは2025年7月に、プライベートアセット運用部を設立した。パイロットファンドを立ち上げ、未上場株式に投資を始めている。

 政府は、資産運用立国の実現に向けて、未上場の成長企業への資金供給を強化する政策を推進している。運用会社はこれまで上場株式を中心に投資してきたが、プライベートアセット市場への参入を促されている。

 未上場株式の運用力を強化するには、投資案件を経験することが不可欠だ。当社は、主要な投資家(アンカー投資家)としてファンドへ出資を行うとともに、投資助言や情報提供を通じてファンド運営に参画することで、運用力向上を目指す取り組みを加速することにした。

◆「上場までの資金を誰が支えていくか」が課題

-レイターステージ企業の資金状況は

後藤氏 日本のスタートアップ企業への投資額(マーケット規模)は、年間8000億円程度で推移している。メインの投資家はベンチャーキャピタルで、次いで事業法人や金融機関だ。

 LPS(投資事業有限責任組合)を使って、例えば「10年プラス延長オプション2年程度」といった有期限で運用する。新規上場(IPO)、M&A(合併・買収)、第三者譲渡、経営者による買収(MBO)などで、株式を売却してファンド全体の利益を獲得する。

 東証がグロース市場改革を行い、「上場後5年で時価総額100億円以上」を目指すことになった。「小粒上場」を控える動きが広がり、IPOまでの期間が長くなる傾向が見られることから、「上場までの資金を誰が支えていくか」が課題に浮上している。

 日本では、レイターステージの企業に資金を供給する投資家は限られている。UntroD Capital Japanは、真空状態となっているレイターステージの資金供給で、実績を積み、高い知名度を誇っている。

◆日本最大級のディープテック特化ベンチャーキャピタル

-UntroD Capital Japanとは

東苑氏 当社社長の永田は、ユーグレナの経営に参画し、東証マザーズ上場と東証1部への市場変更を果たした後、全国の大学の研究者から要請を受けて、日本最大級のディープテック特化ベンチャーキャピタル「リアルテックファンド」を創設した。

 1号ファンドは、「革新的なテクノロジーを育てよう」という思いに共鳴した事業会社を中心に約100億円を調達して2015年にスタートした。現在は4号ファンドを運営している。大学の研究室にある技術を法人化するカンパニークリエーションや、シード・アーリーステージから支援している。

 これとは別に、レイターステージの企業に資金供給を行うため、2024年にクロスオーバー・インパクトファンド1号を立ち上げた。さらに、2026年には、2号ファンドをスタートし、現在ファンドレイズ中である。

 2024年に現在のUntroD Capital Japanに社名変更したが、「UntroD(アントロッド)」は「未踏の」という意味の英語である。まだ誰も手を付けていない未踏の領域に、誰より早く踏み込むことは当社の理念だ。「D」を大文字にしているのは、ディープテックを表現するためだ。

 ディープテック企業とは、地球や人類の課題に資する革新的な研究開発を行う企業だ。研究領域には、例えばバイオ・創薬、ロボティクス、農業、医療、海洋、環境・エネルギー、新素材、宇宙など多岐にわたっている。投資先企業は、いずれもイノベーションで世界を変えるゲームチェンジャーになる力を持っている。

 クロスオーバー・インパクトファンドは、ファンド名の中に「インパクト」を入れている。投資先企業が「社会や環境に対してどれだけポジティブなインパクトを創出するか」という観点も投資判断の基準にしている。

◆上場後の成長ストーリーを描き、安定株主になりうる投資家

-クロスオーバー投資家の役割は

田中氏 シードやアーリーステージの未上場企業に投資するベンチャーキャピタルは、一般的に上場後の市況リスクを取ることができない。上場後はリターンを確保できるタイミングで早期に株式を売却する。このため、ベンチャーキャピタルの出資比率が大きい会社は、上場後の株価に不安が残る。

 クロスオーバー投資家は、上場後の成長ストーリーをしっかり描いて、主にレイターステージから投資を始め、上場後も安定株主として株式を継続保有してくれる。このため、ベンチャー企業からは、クロスオーバー投資家の拡大に対して期待が高まっている。

◆大手運用会社とタッグを組む

-「UntroD クロスオーバー・インパクトファンド2号」のユニークな点は

東苑氏 上場後も継続して株式を保有するクロスオーバー投資を標榜するベンチャーキャピタルは、国内でも数少ない。また、三菱UFJアセットマネジメントという大手運用会社とタッグを組んだという点も、極めて先進的な取り組みだ。

◆独自の分析、より広い視点で企業を比較

-三菱UFJアセットの役割は

秋谷氏 ベンチャーキャピタルとアセットマネジメント会社では、企業を見るポイントや重視する点が異なっている。例えば、アセットマネジメント会社は、上場10年後の企業の将来像を考え、より広い視点で、ほかの上場企業と比較することができる。ファンドマネジャーは、「暗黙知」と言えるような企業分析のノウハウを持っている。そうした視点を取り入れることで、解像度を高めることができる。

 三菱UFJフィナンシャル・グループ全体で見ると、三菱UFJ信託銀行がクロスオーバー・インパクトファンド1号に出資している。さらに、今年6月にファーストクローズが発表された、UntroD Capital Japanが運営するディープテック特化のベンチャーデットファンドにも三菱UFJ信託銀行がパートナー企業として参加するなど、グループ全体で信頼関係を築き、協働を進めている。

◆「投資信託」で個人投資家に投資機会を提供

-運用会社がプライベートアセットに取り組む意義は

後藤氏 今後、個人投資家にこうした投資機会を提供するには、投資信託が一つの手段になるだろう。当社は、プライベートアセットの運用について、実戦経験を積み、一層ノウハウを高めることで、将来的に日本の個人投資家の資金をスタートアップ企業に届けていきたいと考えている。

 金融法人をはじめとする機関投資家の資金規模は預貸ギャップの三百兆円程度だが、個人投資家である家計は二千兆円の規模を有している。そうした資金をリスクマネーとして日本の新たな成長企業に供給していくことは、アセットマネジメント会社の一つの使命だ。

 日本には、モノづくりの伝統がある。ディープテック領域はソフトウエアとハードウエアの技術を複合した産業であり、衛星やロケット、プラントエンジニアリングなど、次世代の日本のモノづくりの産業が当該領域から生まれてくる可能性は大いにあり、日本経済に貢献することが期待される。

◆スタートアップ企業が産業を変革する

秋谷氏 米国では、スタートアップ企業が成長し、産業を変革している。アップルも、グーグルも、日本人の誰もが知る会社だが、いずれもベンチャー企業であり、ベンチャーキャピタルがその資金を支えた。

 スタートアップ企業への投資額は、日本の年間8000億円に対し、米国は40兆円規模だ。実額はもとより、両国のGDP対比で見ても、とても大きな差がある。米国が実践している成長戦略を、日本にも取り込んでいかなくてはいけない。マーケットの規模を拡大することが、イノベーションの創出につながると考えている。

◆日本は先進技術で引けを取らない

東苑氏 レイターステージの企業に対する資金供給が、圧倒的に不足している。当社が旗印を立てて、より多くの方に参加していただきたいと考えている。

 マーケットを拡大するには、経済合理性が伴うことが重要だ。運用しているファンドにおいては、投資先企業を厳選し、上場後も伴走して企業価値を向上させることで、しっかりとしたリターンを投資家の皆さまに還元していきたい。さらに、再び資金が投資される好循環を生み出していきたいと考えている。

 日本はグローバルに見ても、先進的な技術力において、まったく引けを取っていない。日本の企業の歴史をひもといても、グローバルに活躍する企業はいずれもディープテック企業だ。世界中どこでも通用する製品・サービスを提供する企業がさらに育つことが、日本経済の底上げにつながると信じている。

 

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