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分散投資で注目される新興国株ファンド=多様性と選択肢の広さが魅力-三井住友DSアセットの久髙氏と岡田氏に聞く

2026年08月03日 07時30分

(左から岡田氏、久髙氏)(左から岡田氏、久髙氏)

 米国株や人工知能(AI)・半導体関連株へ投資資金が集中する中で、分散投資の必要性を指摘する声が上がっている。新興国株市場の動向と運用戦略について、三井住友DSアセットマネジメント シニアマーケットストラテジストの久髙一也氏と、グローバルパートナー運用部プリンシパルの岡田順矢氏に話を聞いた。

 久髙氏は、新興国株投資の特徴について「多様性に富んでおり、選択肢が広いことが、醍醐味かもしれない」と述べた。岡田氏は、トップダウンとボトムアップ・リサーチを組み合わせたユニークな運用手法で、機動的に運用する「TTI・エマージング厳選株式ファンド」を説明した。主なポイントは以下の通り。

◆新興国株、逆風の中でも株価は上昇

-新興国経済の現状は

久髙氏 資産形成に当たっては、長期の視点で分散投資することが大切だと考えている。今は多くの投資家が、中短期のスタンスでAI・半導体関連株へ集中投資している。一方、新興国株への関心はそれほど高くなく、理解を深める余地があるように思う。

 新興国株の現状だが、2025年4月に発表された米国の関税政策により、対米貿易黒字の大きい中国、ベトナム、インドなど、アジアの新興国経済に逆風になった。また、2026年2月末には米国とイランの紛争が発生、エネルギー価格が上昇してアジア経済にマイナスの影響を与えた。

 ただ、2025年から26年にかけて株式のパフォーマンスを見ると、先進国株指数が約30%上昇したのに対して、新興国株指数は56%上昇した。株価をけん引しているのは、AI・半導体のサプライチェーン上で恩恵を受けている韓国や台湾の銘柄だ。米国のビックテックによるAIインフラ投資が急増しており、半導体だけでなく、データセンターやネットワークをつくるさまざまな素材の需要が拡大したためだ。

◆新興国株には多様な選択肢、「AI・半導体」、「資源」、「政治改革」

-新興国株の特徴は

久髙氏 新興国株の魅力は、多様性だ。選択肢が広いことが、新興国株投資の醍醐味かもしれない。

 例えば、アジアの「AI・半導体」のほかにも、中南米の「資源」と「政治改革」に注目している。地政学リスクやインフレが継続する中、ブラジルやアルゼンチンなど、「資源」を持った新興国の評価が高まるだろう。

 「政治改革」についても、ブラジルは10月に大統領選がある。改革の動きが出てきており、現職の再選の可能性が高まっている。アルゼンチンは、過去には国債がデフォルトしたこともあるが、2024年以降、新大統領の下で政治改革が進んだ。経済成長率がプラスに転じて、海外投資家が注目する国になった。

 さらに、構造的に高い成長が見込まれるインドや中国の巻き返しにも、注目している。インドの産業はAI・半導体から離れていると言われることもあるが、ソフトウエアに強みがあり、見直しの機運が出てきたように思う。

 中国は、先進国のAI・半導体のサプライチェーンに関係していないが、自国の半導体産業の育成を進めている。株式のバリュエーションが相対的に割安になっており、分散の観点から投資妙味があるように思う。

◆機動的に売買、投資機会を生かす

-新興国株のアクティブファンドは

岡田氏 当社の新興国株投信「TTI・エマージング厳選株式ファンド」は、英国の運用会社TTインターナショナル・アセットマネジメントが実質的に運用するアクティブファンドで、ユニークが運用手法を採用している。

 具体的には、トップダウン・リサーチで、マクロの政治・経済環境や市場動向を分析して国・セクターを絞り込んだ上で、ボトムアップ・リサーチで、個別企業のファンダメンタル分析を行い投資銘柄を選定している。アンコンストレインド(制約を設けない)戦略ということで、グロース銘柄とバリュー銘柄の両方を取り込んでいる。

 機動的な運用が特徴で、株価が割高だと判断すれば売却するし、政治イベントや地政学リスクにも機敏に対応する。ポートフォリオの回転率は、150~200%ということで、1年間で2回、回転するイメージだ。新興国は、いろいろなイベントが突然起こることがあるので、迅速な対応が重要になる。

◆多様な地域や業種に着目、超過収益を上げる

岡田氏 2023年8月の設定からの配分を見ると、設定当初は、「台湾の情報技術」に着目し、半導体関連株をオーバー・ウエートにして超過収益を獲得した。2024年7月からは、新大統領が誕生したアルゼンチンに着目し、同国の「エネルギー」や「金融業」のウエートを高めた。2025年9月からは「台湾や韓国の情報技術」に着目している。さらに足元では、分散投資の観点から、相対的に割安になったインド株や中国株に投資している。

 このように多様な地域・業種に着目して超過収益を稼げるところが、このファンドの強みだ。国によって、景気動向も、産業構造も、成長のステージも異なるので、さまざまな投資チャンスがあり、そこに自由にアプローチしてパフォーマンスを上げている。

◆長期サイクル、転換点の可能性も

-新興国株の見通しは

岡田氏 新興国株を米国株のパフォーマンスを比較すると、約10年サイクルの大きなトレンドを見ることができる。

 1985年のプラザ合意以降のドル安局面では、新興国に資金が流入し、新興国株のパフォーマンスが良かった。一方、1995年からは、ドル高やITバブル、アジア通貨危機を背景に、米国株が優位の時代だった。

 2000年に入ると、中国のWTO加盟や「BRICS」ブーム、エネルギー価格の高騰などで、新興国のパフォーマンスが良かった。2008年のリーマン・ショック以降は、米国のIT大手「GAFA」などが台頭し、2024年まで、長期にわたり米国株のパフォーマンスが良かった。

 2025年は、久しぶりに新興国株が先進国株を上回った。各国が米国依存を見直す中で、新興国にさまざまな需要が生まれている。大きなサイクルの転換期に入ったかもしれない。

 こうしたトレンドを振り返ると、米国株だけではなく、新興国株にも分散投資してじっくり長期保有することで、パフォーマンスを改善できるだろう。

◆マーケットリスクや政治リスクには注意

久髙氏 新興国株投資には注意点もある。米国や日本と比較すると、株式市場の流動性が低い。また、ある日突然、政策が大きく変わり、売買できなくなるリスクもある。個人投資家が新興国株に直接投資するのは難しいので、優れたファンドマネジャーが運用する投資信託を利用することも有効だろう。

 

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