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意図、追加性、測定がポイント=インパクト債券運用で-ティー・ロウ・プライスのロートン氏に聞く

2026年09月15日 06時30分

マット・ロートン氏

 インパクト志向金融宣言(IDFI)が開催した「IDFI設立5周年記念カンファレンス」に出席するため、米国の大手運用会社ティー・ロウ・プライスのインパクト債券運用責任者兼ポートフォリオ・マネジャー、マット・ロートン氏が来日した。

 異常気象や自然災害、水不足などが重要な財務リスクに浮上している。債券の投資家はこうしたリスクが発行体に及ぼす影響に配慮するだけでなく、「投資によって課題解決を支援できるか」について考える必要性も高まっている。

 ロートン氏はインパクト債券運用のポイントについて「意図」、「追加性」、「測定」の3点を挙げた。主なやりとりは以下の通り。

◆インパクトの実現と経済的リターンを両立

-インパクト債券投資の運用戦略のポイントは

ロートン氏 私は、グローバル・インパクト債券投資戦略を運用している。世界の投資適格社債を中心に投資し、「インパクトの実現」と「経済的リターンの獲得」の両立を目指している。インパクト債券投資には、重要なポイントが三つある。

 一つ目は、意図(intention)を持つことだ。私たちは、国連のSDGs(持続可能な開発目標)にリンクさせた独自のフレームワークを設けており、それぞれの投資が何にインパクトを与えることを目指しているか、その意図を明確にしている。

 二つ目は、追加性(additionality)だ。「私たちが投資しなければ起きなかったであろうことを起こした」ということが重要だ。債券投資の場合はラベル債の発行を促すなどの働きかけも追加性になる。

 三つ目は、測定(measurement)可能なことだ。ESG(環境・社会・ガバナンス)投資と異なり、インパクト投資では、その成果を測定し、それを経済的リターンではないKPI(重要業績評価指標)を用いて、継続的にモニタリングしていくことが必要だ。

 グリーンボンド、ソーシャルボンドなどのラベル債については、資金使途などがインパクト投資に適合するかを見極めるとともに、発行体をボトムアップで調査し、債券の経済的魅力度も評価したうえで、ポートフォリオに組み入れている。

◆長期を見据え、地域・経済圏も受益者に

-投資家が関心を持つべき理由は

ロートン氏 ESG要素は、環境・社会問題に特有の留意点というだけでなく、企業のキャッシュフローや、格付け、デフォルトリスクなど、債券のファンダメンタルズにつながるためだ。年金基金は30年、40年といった長期の運用を行うので、気候変動や自然災害がポートフォリオに与える影響について検討することが必要だろう。年金基金が十分に魅力ある債券投資を通じて、例えば、水のインフラや洪水対策に投資をすることによって、社会のリスクを下げることは意義深いと考えている。

-レジリエンス投資と一般のインフラ投資の違いは

ロートン氏 一つ目は「どのように建設されるか」だ。気候変動に与える影響などに配慮することが必要だろう。二つ目は時間軸だ。レジリエンス投資は、30年、40年先を見据えた投資だ。

 三つ目は受益者の違いだ。インフラ投資の場合は、それを利用する人が利益を受けるが、レジリエンス投資の場合、利用者だけでなく、周辺地域やコミュニティー、経済圏にも利益が及ぶ。例えば、東京都のレジリエンス債は、社会的な目的のために起債され、プロセスや意図を大切にしている。

◆インパクトを測定、KPIを開示

-投資対象を選別する際の注目点は

ロートン氏 一つ目は、その債券やプロジェクトが、将来の気候変動などのストレスシナリオを想定してデザインされているかどうかだ。

 二つ目は、インパクトの測定と開示がきちんと行われるかだ。KPIを設定し、その成果を継続的に開示することが必要だ。また、独立した第三者機関のスコアも参考にしている。

◆下値抵抗力があり、プレミアムも

-ラベル債券のパフォーマンスは

ロートン氏 グリーンボンドなどのラベル債には、一般債に比べて1~3ベーシス程度のプレミアムが付いているケースが多い。発行体やセクター、通貨によっては、もっと大きな差がある場合があるので、それを丹念に調べることで、投資機会を見つけることができる。

 ラベル債の購入者は、長期投資を目的として償還まで持ちきる投資家が多いので、債券市場全体が大きく変動する局面であっても、値動きは相対的に小さくなる傾向がある。

 私たちは、選定プロセスにおいては、フェアバリューを算出し、魅力ある債券を見極めている。インパクトを意識している発行体は、ファンダメンタルズも強い傾向がある。インパクトと合わせて、リターンを追求する視点を持って運用することが重要だ。

 ラベル債の発行が増加しているため、さまざまな発行体の債券に分散投資してポートフォリオを構築できる。以前は金融や電力会社が中心だったが、現在ではテクノロジーや情報・通信企業、データセンターなどへと発行体の裾野が広がっている。

◆長期資金の調達に親和性

-発行体にとってインパクト債券の役割は

ロートン氏 気候変動への対応や防災などの投資は長期資金を必要としており、債券による資金調達と親和性が高い。また、利払いは固定金利なので、キャッシュフローも読みやすい。国や地方自治体に加えて、民間企業による発行が増えることを期待している。

◆パートナーシップの力

-カンファレンスに参加した感想は

ロートン氏 パートナーシップの力を感じた。年金基金などのアセットオーナー、運用会社、国際機関、国や規制機関などが協力していくことで、インパクト投資が拡大することを改めて実感した。

 アセットオーナーは、インパクト投資を検討する段階から、実際にアクションを取ろうという段階に来ているように感じた。関係者が一堂に会し、情報や知見を共有する場の重要性を再認識した。

 

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