ピクテ投信、ポストコロナのビジネス始動=対面セミナー再開、新ファンドを設定
2021年10月22日 09時00分
ピクテ投信投資顧問(本社東京、萩野琢英社長)は、新型コロナウイルスの収束後を見据え、ポストコロナ時代のビジネスモデルを推進する。11月1日から全都道府県で、個人投資家を対象とした対面セミナーを再開する方針で、オンラインと合わせたハイブリッド型で展開する。
ファンドについても、ESG(環境・社会・ガバナンス)を重視しつつ、たくさんの資産に分散投資する「ピクテ・サステナビリティ・マルチアセット・ファンド(愛称:モンド)」と、ノーロード・低コストでアクティブ運用する世界株投信「iTrustオールメガトレンド」を10月15日に新規設定した。
◆資産の生産性を高める
-ポストコロナ時代の目標は。
萩野社長 一つ目は、日本の家計金融資産の生産性を高めることだ。日本の家計金融資産は、現金・預金が過半を占めており、この部分はリターンがほぼゼロになっている。ここに年2~2.5%の低リスクのファンドを組み入れてもらうことに取り組みたい。
かつては、株式と債券を組み合わせた単純なポートフォリオでリターンを得ることができた。しかし、現在、安定的にリターンを上げるためには、オルタナティブ(株式や債券以外の代替資産)を含めたさまざまなアセットに幅広く分散投資することが必要だ。こうしたマルチアセット型のファンドを日本に定着させることにチャレンジしていきたい。
二つ目は、情報運用会社(インベストメント・アンド・インフォメーション・カンパニー)を目指していきたい。高度なファンドを提供しようとすると、運用能力だけでなく、情報提供がとても重要になる。個人投資家や販売員の方に、しっかり理解していただけるように、情報のデリバリーをしっかりしていく。それを通じて信頼を得て、日本の家計資産の生産性を高めることに貢献したい。
-情報提供の展開は。
萩野社長 個人投資家の資産運用を正しい方向に導いていくには、運用会社が真摯になって、お客さまに寄り添うことが大切だ。その方法は、非常に地道なもので、オンラインで情報提供したり、YouTubeで情報発信したりしている。オンラインで質問に答える資産運用相談会が好評だ。こうしたことをしっかり展開することで、投資家から信頼され、口コミで参加者が増えてきている。
11月1日から「ポストコロナ時代における市場の『転換点』を見据えた資産運用」をテーマに、対面セミナーの全国ツアーを開催する。新型コロナウイルスの感染拡大で2020年2月から対面のセミナーを中断していた。今回から、オンラインとオフラインを組み合わせて情報提供していく。
◆日本拠点開設40周年
-ピクテ投信の現状は。
萩野社長 欧州系の大手プライベートバンクであるピクテは、1981年に日本に拠点を開設した。今年で開設40周年になる。預かり資産額は、公募投信と機関投資家からの受託資産を合わせて、2011年に1.1兆円だったものが、2021年には3兆円に拡大している。
ピクテ投信が提供してきたファンドについて、資産クラス別に預かり資産額の構成比率を見ると、2000年当時は、全体の約9割が成長株関連だった。05年に世界の公益株に投資する「ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)」を立ち上げ、ピークの07年には資産の約3分の2を占めた。
しかし、08年のリーマンショック以降は、「お客さまがご自身の資産を分散投資できるアセットクラスを提供する」という理念の元に、異なるタイプの商品を積極的に提供してきた。その結果、今年8月末には、全体の約4割がマルチアセットなどの低リスク・ファンドになっている。今後は、これらの低リスク商品の割合を6割程度に高めていきたい。
一方、株式ファンドについても、バリュー(割安株)型、グロース(成長株)型、新興国型が、それぞれ3分の1に分散化されるような商品提供を考えている。
◆「ありがとう」と言われる運用会社
-日本の現状とピクテの対応は。
萩野社長 日本の投信市場は、商品やサービスが過剰に提供されているが、信頼できるアドバイザーは希少な世界だ。そうした中で当社は、「ありがとう」と言われる運用会社、信頼される運用会社になりたいと考えており、4年前に設定した「ピクテ・バリュー宣言」に盛り込んだ六つのアクションプランを推進している。
まず、「日本の投資家のための資産運用能力を強化する」ため、日本において本格的なマルチアセット運用の体制を構築しており、来年には完成できそうだ。また、「ピクテ・グループと連携して卓越した商品を提供する」ため、さまざまなオルタナティブ商品を紹介してきた。さらに「適切な運用報酬の実現を目指す」方策の一つとして、ノーロード・低コストでアクティブ運用する世界株投信「iTrust」シリーズを拡充してきた。
「情報提供や教育サービス」の面では、高度な金融知識と経験を持った資産運用の専門家を集めた「ピクテ・インベストメント・オフィス」を設置、このメンバーを講師として、個人投資家向けに全国で年間40万人以上が参加するセミナーを開催している。また、金融機関の窓口で投資信託を取り扱う販売員を対象にしたオンラインの教育ツールには約15万人以上が利用し、視聴回数は400万回に近づいている。