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お客さまの生涯の資産運用に伴走=NISAの活用、カスタマイズが重要に-リスクマネジメント・ラボラトリーのIFA、宮下氏に聞く

2025年12月16日 08時00分

宮下和俊氏

 お客さまの生涯にわたる資産運用に寄り添うIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)を利用する人が増えている。保険・証券を融合させた欧米型のIFAモデルを展開するリスクマネジメント・ラボラトリー(本社東京)で活躍する宮下和俊氏にIFAになったきっかけや資産運用のポイントを聞いた。

 IFAに金融商品の取引システムや、業務管理のツール、研修機会などを提供するプラットフォーマー大手の楽天証券によると、同社を利用するIFAの顧客口座数が2025年6月末で、前年同月比26.6%増の19.5万口座に拡大し、増加ペースが加速した。楽天証券とIFAは、少額投資非課税制度(NISA)の活用をサポートする「NISAマイスター」を展開している。

◆お客さま本位をめざして、都銀・証券を経てIFAへ

-IFAになるきっかけは

宮下氏 97年に都銀に入行し住宅ローンや融資を中心に仕事をしていた。98年12月に銀行で投資信託の窓口販売が始まった時に、投資信託の販売推進を担当した。投資信託や株式、為替について本店で学び、支店のメンバー100人以上にレクチャーする中で、「預貯金だけではインフレに対応できない」という問題意識を持った。お客さまの金融資産をインフレに備えて適切な金融商品に分散していくことが大切だと感じた。

 ただ、商品の中には、満期までの期間が長いものや、長く伴走しないとお手伝いできないものがあった。銀行員には転勤がつきものだ。銀行では、お客さまの生涯にわたる資産形成を伴走し、中長期で寄り添うことは難しいと感じた。

 この頃、大手証券が、転勤がなく同じお客さまを担当することができる社内FA(ファイナンシャルアドバイザー)を募集していることを知った。フルコミッション(完全歩合制)で1年ごとの有期雇用契約という厳しい条件だったが、転職を決意した。

 お客さまに真摯(しんし)に対応する中で、ご紹介を受けたお客さまから、さらに新しいお客さまをご紹介いただくような信頼関係を構築することができた。2008年のリーマン・ショックを乗り越え、大手証券には2002年から2014年まで、同じ場所で、資産形成のアドバイスをすることができた。同証券には約1900人の社内FAが在籍していたが、その中から50人程度が選抜される上級FAに選ばれた。

 ただ、10年以上、勤務する中で、ノルマではないが、会社から短期的な販売成績を期待されるようになった。また、会社が販売してほしい商品が投資環境やお客様の意向に合っていないと感じることが多くなったが、お客さま本位のスタイルを貫いたことで、会社の居心地が悪くなった。

 こうした中で、IFAという職業があることを知り、説明会に参加した。転勤がなく、生涯にわたってお客さまに伴走できて、しかも組織としての成績を意識することなく、自分が考えるお客さま本位のスタイルを貫くことができる。

 私が所属しているリスクマネジメント・ラボラトリー(本社東京)は、投資信託をはじめとする運用商品を活用した資産形成の支援と、生命保険・損害保険商品を活用したリスク管理の提案を行っており、証券と保険を融合させた欧米型のIFAサービスを提供している。社内に、それぞれの分野で高い専門性を持つ担当者がいて、お客さまのライフプランに合わせて、ワンストップで連携する仕組みが整っている。さらに、社外の税理士などの専門家と連携する仕組みも整っているので、相続や贈与にも対応し、全体最適を追求できる。

◆フィーベースで、お客さまと同じ目線に立つ

-運用プランの枠組みは

宮下氏 その頃、楽天証券は、IFAが担当するお客さま向けに、預かり資産残高に対して年率1.1%(税込み)の管理口座料(フィー)をいただく「管理口座コース」を始めた。

 取引毎にかかる手数料ではなく、フィーをベースに報酬をいただくと、お客さまとIFAが同じ方向を向いて資産運用に取り組むことができる。お客さまの資産が増えると、お客さまの満足度が高まるのはもちろんだが、フィーが増えることで楽天証券、運用会社、弊社、担当者も含めてみんなが幸せになる仕組みだ。取引手数料は、商品の売買回数に比例するので、お客さまの資産状況と私たちがいただく報酬が一致しないことがある。「管理口座コース」を利用することで、お客さま本位のサービスを提供するパーツが整ったと感じた。

 「管理口座コース」では、楽天証券の商品ラインアップに並んでいる投資信託や株式、債券を取り扱うことできる。ライフプランを立て、社内外のプロフェッショナルと連携して、保険を含めて、全体として最適な資産プランを提案している。私は、銀行と証券会社で蓄積した経験を生かして、オリジナリティーのある運用プランをご提案している。

◆積立投資を軸に、投資余力を持った運用プランを提案

-運用プランの特徴は

宮下氏 私が提案する資産運用のスタイルは、株式型の投資信託の積立投資を軸にして、現金による余力をしっかり持って、進んで行くスタイルだ。お客さまのリスク許容度や好みに応じて、個別株や外国株、ETFも取り扱う。中長期投資が基本スタイルだが、相場が上昇した局面で現金余力が乏しくなっている場合には、割高になった資産を売却して現金のポジションを増やし、逆に相場が下がった局面では現金余力をしっかり使って積立を増額したり、割安になった資産を購入するスタイルだ。

 現金で投資余力を残しておくことで、相場が下落したときには、積み立てを増額したり、一括投資ができる。「管理口座コース」であれば、こうした取引をしても、お客さまに売買手数料の面でご負担をかけることがない。

 お客さまには「入り口」の段階で、しっかりと「インフレに備える重要性」や「積立投資で相場が下がった時に購入口数が増える効果」をしっかり共有し、理解を深めていただいている。ただ、投資をスタートして半年から1年程度のお客さまは、相場の下落局面では不安になる方が多いので、繰り返しご連絡して、初心に立ち返っていただき「積立投資の効果」を思い出していただいく。

 こうした取り組みの結果、お付き合いの長いお客さまからは、相場が下落すると、「時が来ましたね」と積立の増額や追加買付の依頼が入ることも多い。お客さまと一緒に資産形成に立ち向かう、同志のような一体感が感じられるようになる。机を挟んで向かい合って座っている感じではなく、同じ方向を向いて進んで行くチームのような感覚だ。

◆ライフプランをもとにNISAの活用法を考える

-NISAの活用は

宮下氏 目標に到達する道のりを「見える化」するため、何よりもライフプランニングの作成が重要だ。ライフプランをもとにして「目標実現のためにNISAをどう活用するか」を考える。家族構成、収入、保有金融資産、投資経験、リスク許容度などの状況は世帯により異なるので、NISAの活用にもカスタマイズが大切だ。

 このため、いきなりNISAから話を始めるのではなく、ライフプランニングのヒアリングからスタートする。普通の会話をする中で、家計のことやご家族のことをお話しいただけるように工夫をしている。また、資産形成の重要性、積立投資の効果に関する理解、IFAの仕組みと私のアドバイスのスタイル、「管理口座コース」の仕組みを、徹底して共有している。

 その上で、楽天証券のサービスをフル活用して、少しでも効率良く資産運用してもらえるように、きめ細かくご説明をしている。例えば楽天証券と楽天銀行をつなぐ「マネーブリッジ」の手続きをご説明したり、投資信託の積立投資の場合、「楽天カード」クレジット決済や「楽天キャッシュ」での決済を使うことで、「楽天ポイント」がたまる仕組みを紹介する。

 NISAは、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」を合わせて年間360万円の投資枠があり、月額最大30万円の積立てができる。運用益に税金のかからないNISAを優先しつつ、余力が十分にある方には課税口座でも積立投資をしていただく運用プランを立てている。

◆短期投資家のSNSに惑わされない

-個人投資家にアドバイスは

宮下氏 長期の資産形成を目指す人が陥りやすい失敗は、SNSを見て短期で売買する人の意見に惑わされてしまうことだ。市場環境が不安定になると「保有資産を全て売却した」といったコメントが出てくる。「私も売らなくていいのか」、「積み立てを継続していいのか」といった不安に駆られてしまう。

 人間である以上、相場の動きに一喜一憂はやむを得ないと思う。伴走しているアドバイザーが、「積立投資の中長期の意義」や「積立投資で期待できる効果」を、相場が下落するたびに繰り返しお伝えすることが大切だと思う。

 短期の証券投資を短距離走だとすると、資産形成は長距離走だ。鍛える筋肉も、必要な栄養素も違う。「短距離走の選手のまねをしないでください」ということをお話して、自分の投資スタンスを明確にしてもらっている。

 私のお客さまの中には、最初のお客さまが亡くなられて、そのお子さま、お孫さまと、2代、3代のお付き合いをいただいている方もいる。株価の暴落を乗り越える回数が多いほど、お客さまにも、長期投資の効果を実感していただいている。積み立て投資を地道に淡々と続けることが大切だ。石橋をたたいて渡る部分と、しっかり攻める部分のバランスが重要だと思う。

 

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