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WEEKLY 2021年7月18日号

デルタ変異株に要注意

Beware the Delta Variant, the Recovery Risk That Markets Are Overlooking

市場が見落とす経済回復リスクとは

コロナ、終わらず

JASON REDMOND/AFP via Getty Images

多くのアメリカ人にとって、新型コロナウィルスのパンデミック(世界的大流行)は終わったかのようだ。しかし、米国経済にとってそうではない。インフレ懸念が再浮上しており、先週は6月の消費者物価指数(CPI)が一段と更新し、7月のミシガン大学1年期待インフレ率速報値が過去最高となり、米連邦準備制度理事会(FRB)が地区連銀経済報告(ベージュブック)で大多数の企業は物価圧力を一過性のものと考えていないと指摘した。経済成長へのリスクが増しているのだ。

米国では、感染力の強い新型コロナウィルスの「デルタ株」が主流。ジョンズ・ホプキンス大学のデータによると、1週間前に約半数の州で減少していた新型コロナウィルスの感染者数は、ほぼ全州で増加している。米疾病対策センター(CDC)のデータモデリングによれば、新規陽性者数の7日間の移動平均値は5月中旬以来の最高値を記録。感染者数はワクチン接種率の低い州で最も増加しているが、新型コロナウィルス感染の再拡大はこうした地域に限らない。サンフランシスコ市では12歳以上の市民の4分の3以上がワクチンを2回接種したが、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のボブ・ワクター医学部長は、1日の感染者数が4倍、入院者数が2倍に増えているとツイートした。同氏によれば、サンフランシスコ市の数字はまだかなり低く、注意喚起のレベルだが、全米で最もワクチン接種が進んでいる都市でのこうした感染の増加は、デルタ株の脅威が本物だということを示すものであり、ワクチン接種率が著しく低い地域は深刻な打撃を受けかねないという。

米国の経済活動再開に気を取られている投資家には、新型コロナウィルスの再拡大まで目が向かないかもしれない。米経済ではサービス業全体がようやく事業活動を全面的に再開させ、少なくとも旺盛な顧客の需要を満たせるだけの労働者を再雇用するまでになっている。マサチューセッツ大学アマースト校のアリンドラヒト・デュベ教授(経済学)は「景気の過熱やインフレばかり話題に上るが、数カ月どころか数週間先に起こりかねない危機にほとんど気づいていない。その危機とは公衆衛生は言うに及ばず、雇用の増加、ビジネス再開、学校生活に影響を及ぼしかねないものだ」と語る。

多くのエコノミスト同様、デュベ氏も再度ロックダウン(都市封鎖)があるとは考えていない。「だが、パンデミック下の経済がすべて終了したわけではない」として、感染拡大の連続が消費者の警戒心を高めるかもしれないと警鐘を鳴らす。地域ごとの規制強化については言うまでもない。全米で最も人口の多いロサンゼルス郡(行政地区)では、高いワクチン接種率にもかかわらず、15日の感染者数が1週間前からほぼ倍増し、入院患者数は約3倍となったことを受け、屋内でのマスク着用義務を復活させた。

マーケットには調整の可能性もある

消費者が注意し始めた気配はある。16日に発表された7月の米ミシガン大学消費者マインド指数(速報値)は予想外の急低下となり、ランガー・リサーチの週間消費者信頼感指数は低下傾向をたどっている。しかし、投資家の反応は鈍い。ロイホルド・グループのチーフ投資ストラテジスト、ジム・ポールセン氏は、新型コロナウィルスの感染が再燃するリスクは投資家がワクチン接種や経済再開について予想している内容から依然として乖離していると指摘。感染の増加と学校での対面授業の再開やオフィスへの出勤、パンデミック失業保険特例措置の期限到来が重なることから、こうしたタイミングが心配の種になっている。パンデミックはまだ終わっていない。ポールセン氏は「供給の早急な回復を妨げる事態が到来すれば、先延ばしになっていた調整がマーケットで始まるかもしれない」と語る。
ビジネスの制限や隔離に関しては、2020年の繰り返しは起きないだろう。しかし、9月から以前の生活に戻ることを考えている消費者が二の足を踏まないとは限らない。そうなれば成長は妨げられ、労働力の供給不足が続く恐れもある。

 

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