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WEEKLY 2025年8月10日号

関税などの懸念を払拭して株価は高値圏

Tariffs Be Damned. Stocks Flirt With a New Record High.

業績が好調ならば乱高下があっても我慢

好業績と利下げ期待で上昇

Adam Gray/Bloomberg

Cは「慢心(Complacency)」のCだが、株式市場にとって十分良いもののようだ。

株式市場は、トランプ大統領の関税政策や、急速に弱まっている模様の労働市場への懸念を無視して、史上最高値に近い水準まで急回復した。先週の主要株価指数を見ると、ダウ工業株30種平均(NYダウ)は1.3%高の4万4175ドル61セントとなり、S&P500指数は2.4%上昇して6389.45で引けた。ナスダック総合指数は3.9%高の2万1450.02となって史上最高値を更新した。小型株のラッセル2000指数は2.4%高の2218.42で週末を迎えた。

もちろん、この上昇には理由がある。企業業績は引き続き好調で、電子商取引向けソフトウエア大手のショッピファイ<SHOP>やネットワーク機器のアリスタネットワークス<ANET>などが、大幅な業績上振れを受けて急騰した。投資家はまた、雇用情勢に関する悪いニュースが市場にとって好材料となることを期待している。背景には、雇用情勢の悪化が米連邦準備制度理事会(FRB)に来月の利下げを促すとの見通しがある。市場では現在、9月17日の会合で0.25%ポイントの利下げが実施される確率が約90%と織り込まれている。

堅調な企業業績に加えてIPO市場も好転

しかし、ウォール街は短期的な見通しについて過度に楽観的過ぎるのだろうか。シカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティ指数(VIX指数)は先々週の終値が20を上回った後、先週末は15.15で引けており、この水準は株式市場に恐怖感が存在しないことを示している。恐怖心のない市場だが、今はそれが適切な雰囲気なのかもしれない。サード・ビュー・プライベート・ウェルスのマネージングパートナー兼共同創業者フランク・マッキアーン氏は、S&P500指数は年末までに現在の水準から8%高い6900に達すると予想している。

マッキアーン氏の主張の根拠は、FRBの利下げ見通しに加え、トランプ政権と議会による減税と規制緩和が、来年の企業利益を押し上げるというものだ。S&P500指数の1株当たり利益(EPS)が2026年に300ドルとなれば、23倍の株価収益率(PER)を適用すると、指数は6900になるという計算だ。マッキアーン氏は「このように利益見通しが強い状態でPERが縮小するのはまれだ。米国例外主義という株式市場のテーマは終わっておらず、米国解放の日の前後に一時的な調整期間があっただけだ」と指摘する。

マイクロソフト<MSFT>とメタ<META>(旧フェイスブック)の堅調な業績に加え、アップル<AAPL>が米国での投資を強化するとの直近の計画は、マグニフィセントセブン(M7)トレードを再燃させた。この夏、宇宙船開発企業のファイアフライ・エアロスペース<FLY>、AI開発プラットフォームのフィグマ<FIG>、ステーブルコイン関連のサークル・インターネット・グループ<CRCL>の上場が成功したことで新規株式公開(IPO)市場は回復傾向にあり、リスクテイクへの新たな意欲の兆候を示している。

アメリプライズ・フィナンシャルのチーフマーケットストラテジスト、アンソニー・サグリムベネ氏は、「人工知能(AI)とハイテク分野での長期的な追い風は継続する可能性が高い。利益成長が広範囲には広がらないリスクはあるものの、ハイテク株は市場を安定させる要因となりそうだ。5~10%の調整局面があれば買いを入れるべきだ」と述べる。

短期的に乱高下があっても待つべき

株式市場の次のハードルは、今週発表予定の7月のインフレ指標と小売売上高だ。消費者物価指数(CPI)の上昇ペースは、一部関税の影響により加速すると予想されている。しかし、上場投資信託(ETF)のSPDRリテールETF<XRT>が先週4.1%上昇したことからも分かるように、米国人の消費は依然として底堅いようだ。JPモルガン・プライベート・バンクの米国投資戦略責任者、ジェイコブ・マヌーキアン氏は「8月1日の雇用統計の下方修正にもかかわらず、企業の利益は驚くべき水準を維持している。両方の要因が並立する可能性はあり、深く考えすぎる必要はない。株式市場は引き続き上昇し得る」と述べる。

8月と9月は株式市場が荒れやすい月だということは分かっている。しかし、米国企業が比較的楽観的な見通しを維持している限り、投資家はただ耐え忍び、夏の終わり頃に起こる市場の乱高下が収まるのを待つべきだ。

それを慢心と呼ぶなら、そう呼んでも構わないが、同時に「正しい行動」と呼ぶこともできる。

 

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