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WEEKLY 2025年8月17日号

販売伸び悩むファストフード、ドリンクに活路

Fast Food Is Hungry for Sales. The Latest Play: Beverages

高い利益率に集客効果期待

新しいフレーバーや魅力的なビジュアルでZ世代に人気

Illustration by Elias Stein

価格上昇や関税、さらに健康志向の高まりを背景に売り上げが停滞する中、ファストフード業界は飲料に活路を見いだしている。飲料は食品と比べて調理が容易で、利益率も高い。食事を注文する際に飲料を頼まない顧客も少なくないが、新しいフレーバーや魅力的なビジュアルは購入意欲を刺激する可能性がある。加えて、飲料は1日を通じて集客効果が期待できる点も強みだ。

ファストフード大手マクドナルド<MCD>は先日、9月から米国内の約500店舗でドリンクの試験販売を始めると発表した。対象となるのはアイスコーヒー、フルーツ風味の清涼飲料、クラフト風ソーダ飲料、エナジードリンクだ。米国部門のカスタマーエクスペリエンス兼マーケティング責任者であるアリッサ・ブエティコファー氏は、「飲料分野で確かな勢いが見られる。特にZ世代のファンが、冷たく風味豊かな飲み物を定番の品として選ぶ傾向が強まっている」と語った。

ヤム・ブランズ<YUM>傘下のタコベルも昨年12月にカリフォルニア州の店舗に「Live Más Café(リブ・マス・カフェ)」を設置し、30種類を超える飲料を投入した。半年後、これらの店舗の売り上げは40%増加し、タコベルは年内に同様のカフェをさらに30店舗展開する計画を明らかにした。今夏にはウェンディーズ <WEN>がフォームをのせた水出しコーヒーやフルーツ風味のエナジードリンクを導入。さらにレストラン・ブランズ・インターナショナル<QSR>傘下のバーガーキングもレモネードやアイスコーヒーを追加すると発表した。

もっとも、この戦略が必ずしも成功するとは限らない。SNSなどでの「バズり」や話題性がしぼむと売り上げが低下する可能性があるほか、節約志向を強める消費者は支出を抑える際、最初に飲料を削る傾向がある。さらに、メニューの種類を増やし過ぎるとサービスの提供速度が落ち、従業員の負担増や食事客の利便性低下につながりかねない。一方で、前向きな見方もあり、投資銀行BTIGのアナリスト、ピーター・サレハ氏は、マクドナルドが10年前にマックカフェを再投入した際にはマクドナルド全店の売り上げを押し上げた実績を指摘した。

先週の出来事

市場動向
原油先物相場は下落した。アラスカで予定されるトランプ米大統領とロシアのプーチン大統領との会談が注目されたことが背景となった。またトランプ氏が米労働省労働統計局(BLS)の次期局長として保守系シンクタンクのヘリテージ財団でチーフエコノミストを務めるE・J・アントニ氏を指名し、解任劇に続く人事は反発を招いた。
週明けの株式市場は下落して始まった。米中が通商協議を90日間延長し、トランプ氏が金地金への関税見送りに同意したことが要因となった。翌12日にBLSが発表した7月の消費者物価指数(CPI)が市場予想を下回り、利下げ期待が高まったことで、S&P500指数、ナスダック総合指数、ビットコインはいずれも最高値を更新した。しかし、14日に発表された卸売物価指数(PPI)の伸びが加速したことで、上昇基調は一服。さらに15日発表の消費者信頼感指数(CCI)は低下し市場心理を冷やした。
週間ベースでは、ダウ工業株30種平均(NYダウ)は1.74%高となったものの、最高値更新には届かなかった。S&P500指数は0.94%高、ナスダック総合指数も0.81%高で週を終えた

企業動向
・半導体大手エヌビディア<NVDA>とアドバンスト・マイクロ・デバイシズ<AMD>は、中国での半導体販売収入の15%を米政府に支払うことで合意した。半導体の輸出ライセンスの確保に向けて異例の取り決めとなった。これに対し中国政府は、国内のハイテク企業に対し、米国製半導体を購入する正当な理由を示すよう求めている。
・トランプ氏は、半導体大手インテル<INTC>のタン最高経営責任者(CEO)と会談した後、タン氏へのネガティブな評価を一転させた。米国政府はインテルへの出資に関心を示しているという。
・イーロン・マスク氏は、アップル<AAPL>の配信プラットフォーム App Store(アップストア)が、米オープンAIのチャットGPTを優遇していると主張し、提訴する可能性を警告した。なおオープンAIは、マスク氏が共同設立した脳神経インターフェース開発企業ニューラリンクに対抗するスタートアップ企業、マージ・ラボへの出資を検討している。
・トランプ氏は、金融大手ゴールドマン・サックス<GS>のデービッド・ソロモンCEOに対し、チーフエコノミストを交代させるよう求めた。自身のSNSで、ゴールドマンが市場と関税について「誤った予測を行った」と批判した。

M&A(合併・買収)など
・中国国営の中国船舶集団(CSSCホールディングス)と中国船舶工業は、160億ドル規模の合併を完了した。これにより世界最大の造船会社が誕生した。
・人工知能(AI)スタートアップ企業パープレキシティは、アルファベット<GOOGL>のブラウザー「Chrome(クローム)」を345億ドルの現金で買収する提案を行った。

今週の予定

8月19日(火)
今週は小売大手の決算が相次ぎ、小売業界が注目される。19日にホーム・デポ<HD>、20日にロウズ<LOW>、ターゲット<TGT>、TJX<TJX>、21日にウォルマート<WMT>とロス・ストアーズ<ROST>が、それぞれ決算を発表する予定。
8月20日(水)
米連邦公開市場委員会(FOMC)の、7月下旬の議事要旨が公表される。この会合でFOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を4.25~4.50%に据え置いた。
8月21日(木)
S&Pグローバルが8月の製造業およびサービス業購買担当者景況指数(PMI)を発表する。コンセンサス予想では、製造業PMIが49.9、サービス業PMIが53.4と見込まれている。7月はそれぞれ49.8と55.7だった。
8月22日(金)
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が、カンザスシティ連銀主催の年次経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」で講演する。本年の会議テーマは「転換期にある労働市場:人口動態、生産性、マクロ経済政策」で、会期は21〜23日。

統計と数字

1兆1000億ドル:2025年の米企業による自社株買い予想額。1982年以来の高水準となる見込み。
110億ドル:ソフトバンクグループ<9434>の孫正義会長の資産増加額(8月最初の2週間)。背景はAI関連。
54%:ギャラップ調査で飲酒すると答えた米国人の割合で、過去90年で最低水準。共和党支持層では46%に落ち込んだ。
101万TEU:ロサンゼルス港が7月に処理したコンテナ換算量(TEU=20フィートコンテナ換算)。2021年5月を上回り、過去最高を記録した。

 

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