サンプル(過去記事より)
レムデシビル、米国向けの割当量は不十分
アナリストによる今夏の見通し
多くの感染者が利用できず
新型コロナウイルス感染治療に用いられる米バイオ医薬品メーカー・ギリアド・サイエンシズ<GILD>の抗ウイルス薬「レムデシビル」について、米アナリストは米国への割当量が予想より少なかったと受け止めている。RBCキャピタル・マーケッツのアナリスト、ブライアン・エーブラハムズ氏によると、割当量が予想以上に少ない結果、米国では今後数カ月にレムデシビルでの治療が必要になるかもしれない何十万もの人々がこの薬品を利用できない可能性がある。
ギリアドは、自社で保有する全てのレムデシビル(150万回投与分)を世界中に無償で提供すると発表した。この数量は14万人分の治療を行うことが可能という。米食品医薬品局(FDA)は今月1日、レムデシビルを新型コロナ感染治療薬として使用することを承認、これを受けて日本でも7日、緊急時に審査を簡略化する「特例承認」の適用により使用が認められている。
米保健福祉省は9日、ギリアドが今後6週間のうちに150万回分のうち、60万7000回分を米政府に供与することを明らかにした。同省によれば、この数量は新型ウイルスの感染患者のうち約7万8000人を治療するのに対応可能な量だという。米国内での感染患者の多いニューヨーク州は2万2600回分を受け取った。これで感染患者のうち2900人を治療することが可能になる。ニュージャージー州には、患者1048人を治療するのに必要な量が配布された。
供給不足、年末まで続く恐れ
エーブラハムズ氏は、「われわれの分析モデルによれば、7月末までの時点で30万人以上の患者が、(投与が必要になった場合でも)レムデシビルを利用できない可能性があることを示唆している。5月現在でも米国内の感染患者の半数程度が必要な際に利用できずにいる。限られた供給量しかない状態は年末まで続く可能性がある」と指摘した。
ギリアドはレムデシビルの生産拡大に努めており、10月までに50万人分、12月までに100万人分を増産すると表明している。また同社は海外向けの対応として、今後2年間にわたりレムデシビルを生産するため、外部の化学、医薬品メーカーと協議していることを明らかにした。
これについてエーブラハムズ氏は、こうした数量では不足状態が続く可能性があることを示しており、増産計画も予想される需要にはるかに及ばない水準との見解を示した。
エーブラハムズ氏は、「保健福祉省の発表によれば、米国向けの供与はわずか40%だ。これは、われわれが想定していた80%という水準を著しく下回るものだ」と指摘した。さらに同氏は、「米国向けの60万7000回分は今後6週間にわたり全米50州へ配布される。このうち最初となる2回の配布分はいずれも5万回分以下で特定の地域に送られている。われわれは、直ちに配布されるものと想定しており、計画は予想よりも遅いペースとなっている」と述べた。