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ハーツが破産申請準備との報道が株価にもたらす影響

Hertz Is Said to Weigh Filing for Bankruptcy. Here’s What It Could Mean for Auto Stocks.

レンタカー業界が直面する状況

CEOは回避可能と表明

Getty Images

米レンタカー大手ハーツ・グローバル・ホールディングス<HTZ>は4月30日、リース契約料などの支払いができなくなっているとし、5月4日まで支払いの猶予期間に入っていることを明らかにした。その後、同社が破産法適用申請の可能性に備えているとの報道があった。

 各国当局が新型コロナウイルスの感染拡大を抑制しようと努める中で、人々の旅行はほとんど停止状態となっており、レンタカー業界各社は大きな打撃を受けている。同じく米レンタカー大手エイビス・バジェット・グループ<CAR>は、4月の売上高が前年同月比で80%減少したことを明らかにしている。自動車ディーラーは米国内の多くの地域で現在、休業状態にある一方、失業率の上昇で乗用車を購入しようとする層の収入も減少している。このため、レンタカー会社にとって保有する乗用車を一部売却し、業務規模を縮小するのは困難になっている。

 こうした財政面からの負担により、ハーツはリース契約料を4月27日に支払うことができなかった。同社がリストラに向けたアドバイザーを雇ったとの報道があったほか、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、破産法申請の可能性ついて検討しているとされる。

 ハーツのキャサリン・マリネロ最高経営責任者(CEO)はブルームバーグとのインタビューで、同社は破産申請を回避可能だと語った。同氏によれば、ハーツは、リース契約先や銀行との間で申請回避に向けて協議しているほか、政府からの支援も目指しているという。

証券化されている車両

ただし、クレジット・サイツのアナリスト、グレン・レイノルズ氏とケビン・チャン氏は、リース契約料の延滞について、「それは、収益減少の勢いを弱めることのできない危機的な状況の中でのデータの一つにすぎない」と指摘している。

 レンタカー業界が保有車両を管理している仕組みを考えると、ハーツと債権者との交渉がもたらす結果は、同社のみならず、中古車市場に広範囲な影響を及ぼす可能性がある。
 
 ハーツの保有する車両は証券化されている。つまり、ハーツは、リース契約と車両自体を担保とした証券を発行する子会社から車両をリースしている。

 これらの証券には、車両価格に関する契約上の複雑な取り決めが存在する。シティグループのストラテジスト、メアリー・ケーン氏によれば、これらの契約に関連して、債権者が債券の元本償還のため、車両を売却する権利を取得する、というシナリオもあり得るという。

 車両を安値で売却することになれば、中古車市場における該当車両の相場に影響を及ぼす公算が大きい。シティグループの推定によれば、ハーツの保有車両の価値は約100億ドル。昨年末時点で、保有車両のうち約21%がゼネラル・モーターズ<GM>、約18%がフィアット・クライスラー・オートモービルズ<FCAU>、約12%がフォード・モーター<F>、10%が起亜自動車<000270>の車両で構成されている。

 アナリストらは、大量の中古車両を処分しても、恐らくハーツにも債権者にとっても助けにならないとみている。しかし、そうした状況は、リース契約会社がハーツに対する契約条件を緩和することを意味しない。

 ムーディーズ・インベスターズ・サービスによれば、「かつて例を見ないほどの市場の混乱、そして流動性を欠いた現在の中古車市場を考えると、資産担保証券(ABS)所有者の一部は、ハーツが車両を売却処分しないよう、リース契約料に関して何らかの猶予措置を講じる可能性もある」という。その上で、ムーディーズは、「ただし、関係者は、リース契約条件を交渉し、これを最大限に生かすため、事業面および法律面からの課題に直面する公算が大きい」とみている。

 

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