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出遅れの銀、白金に注目

Silver, Platinum Missed Much of the Commodities Rally. Prices May Catch Up in 2020

工業用金属指数、19年はわずか2%の上昇

成長見通しが後押し

EPA時事

2019年のコモディティー相場高騰に乗り遅れた、銀や白金など工業用金属に今後数年、注目が集まる可能性がある。

コモディティー24種で構成するS&P商品指数(トータル・リターン)は年初から12月中旬までに17%近く上昇。これに対し、工業用金属指数は約2%の上昇にとどまった。鉄鋼のコーティングなどに使われる亜鉛に至ってはマイナスだ。

TIAAバンクの国際市場部門社長のクリス・ギャフニー氏は、工業用金属が取り残されたのは「投資家が世界経済の成長について引き続き懸念しているため」と分析する。しかし、成長見通しは上向いており、世界の主要中銀の大半が米国に倣って、2020年中の金利据え置きに傾いている。

同氏は「低金利、中銀の(景気)支援的政策で世界経済の成長が促される。製造業も。これは工業用金属の相場にはポジティブになる」と指摘。工業用の中でも銀と白金は、成長見通しが強まってくる際には他と比べパフォーマンスが良く、「幾分の遅れを取り戻す動き」があると分析した。

年初来の銀先物相場の上昇率は約10%で、15%超の金を下回っている。

パラジウムは長期的にも上向き

工業用金属で今年傑出しているのはパラジウムだ。供給がタイトなため62%上げている。ガソリン車の排ガスを制御する触媒コンバーターに使われるが、ディーゼル車の触媒に使われる白金の相場は約16%の上昇にとどまっている。

アバディーン・スタンダード・インベストメンツのETF担当ヘッド、スティーブン・ダン氏は、パラジウムは長期的見通しも上向きだとみている。今後数年供給不足が続く見通しで、「複製困難なため貴重とみなされている」と語った。

一方、ニューヨークIDB バンクの最高投資責任者(CIO)のグレゴリー・レオ氏は、技術と革新が「コモディティーの大半にとって強い逆風となる」とみている。

「電気自動車はまだ高いが、バッテリー技術や充電インフラの改善により、需要が高まっている」と分析。これにより、電気自動車の主要部分に使われる銅やニッケルなどのコモディティーの需要は増える可能性があると分析。

しかし、代替エネルギーにより「石油への依存が制限される」とも指摘。2020年にはエネルギー価格が逆風に見舞われると語った。

次の景気サイクルでも低調か

USバンク・ウェルスマネジメントのシニア投資ストラテジスト、ロブ・ハワース氏は「高齢化で世界の成長見通しが圧迫されている。今年インフレ見通しはわずかに高まり、恐らく、さらに2、3年、そうかもしれないが、相場を押し上げ得る根本的な需要増を再びもたらすには不十分だ」と語った。

同氏はさらに「コモディティー相場は、金融資産に比較すると極めて安いが、経済成長を加速させることで、エンドユーザーの需要を改めて喚起しなければ、コモディティー相場は、平均して、次の景気サイクルで株式にアンダーパフォームするとみている」と述べた。

 

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