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中国移動の株は安い

China Mobile Dominates the World’s Biggest Market. Its Stock Is Cheap

世界最大市場で最大手

利益、配当増の可能性

AFP時事

中国の携帯電話最大手、中国移動通信<CHL>ほど巨大かつ安い企業は世界にほとんどない。顧客数は9億4600万人と、ベライゾン・コミュニケーションズ<VZ>、AT&T<T>の10倍で、米国の人口のほぼ3倍だ。売上高は年1000億ドルを超える。

これまでのところ規模は株価のパフォーマンスに反映されていない。米国上場の中国移動の株価は20日時点で41ドルと、10年前とほぼ同じ水準だ。2019年の1株当たり予想利益3.80ドルの11倍。

同社は最近、次世代通信規格5Gサービスを展開し、見通しは改善している。源泉徴収税引き後の配当利回りは4%。

バーンスタインのアナリスト、クリス・レーン氏は「中国移動は正しく評価されていない世界的な巨大企業であり、5Gへのアップグレードが好材料になる見込みで、利益や配当が増える可能性もあると語った。同氏は中国移動をアウトパフォームと評価し、目標株価を51ドルとしている。

5Gで増益へ

中国移動の株価収益率は、ベライゾンとAT&Tを若干下回る程度。しかし、キャッシュフローに対する企業価値、利払い・税引き・償却前利益(EBITDA)でみると、米2社との差は大幅に広がる。企業価値は株式市場での価値に純債務を加えたものだが、中国移動はネットで470億ドルのキャッシュだ。

また中国移動の時価総額は19年の予想EBITDAの3倍未満。大手企業としては最低の部類だ。ベライゾンとAT&Tは巨額の債務を抱えているため、8倍。通信会社に投資する者は、伝統的な株価収益率より、財務状況をより良く反映する企業価値・キャッシュフロー比率を選好する。

中国移動は、過去2年間の中国通信<CHA>、中国聯通<CHU>との4G価格競争で打撃を受け、2019年上半期の利益は15%近く減少。株価は15%下落した。ただ、レーン氏は5Gサービスの価格が高いため、下半期に2%増え、20年の増益率は11%になるとみている。

中国政府が72 %保有

中国移動の株価低迷は、国が管理する企業への懸念を反映している。中国政府は同社の72%を保有し、メーンの上場先は香港市場。政府は、中国移動の株主へのリターンを生み出すより、中国人民に対し、携帯電話サービスをさらに広く、そして安く提供することにより関心があるもようだ。

レーン氏は、中国政府がより良いバランスを取るべきだと考える。「中国移動は、投資家に高水準のリターンを提供しつつ、引き続き、大がかりな通信網を構築し、高品質のサービスを低価格で供することが可能だ」と語った。

同社は過去数年間、高速データ通信用の無線網構築に巨額の資金を投じてきた。2014年以来、ブロードバンドの顧客は事実上のゼロから1億7500万人に増加した。米業界首位のコムキャスト<CMCSA>のブロードバンド契約者数は2900万人。

想定外の勝者か

中国移動の配当見通しは株価にとって重要だ。米国の通信会社とは異なり、固定された四半期ごとの配当を出すわけではなく、半年に1度の配当は利益にリンクしている。2019年上半期は16%低い1.53香港ドル(約20米セント)だが、8月8日の上半期決算報告で、下半期に配当を引き上げる可能性を示唆した。

レーン氏は中国移動は巨額の手元資金に影響を及ぼさずに配当を上げられるとみている。今後数年に、利益配当率を現在の50%から75%に向けて引き上げるべきだと、求めている。

中国移動株を保有するロンドンのギネス・アトキンソン・アセット・マネジメントの投資ダイレクター、エドマンド・ハリス氏は「利益が安定化しつつある。増配の余裕もあり、株価収益率も拡大する余地がある」と述べた。
 
中国政府の大きな影響力で、投資家は中国移動を敬遠するかもしれないが、同社は配当比率の引き上げに動きつつあり、株価は依然魅力的だ。

5G展開、2020年見通しの改善、そして、より株主を重視した政策により、20年の世界の通信セクターで中国移動が想定外の勝者になる可能性がある。

 

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