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WEEKLY 2024年7月7日号

マグニフィセント・セブンも永遠ではない

The Mag 7 Aren’t Unique-and They Aren’t ‘the Market’

歴史の教訓は、現在の勝ち組が未来の勝ち組であることを保証しない

圧倒的なパフォーマンスを見せるM7

TRANSCENDENTAL GRAPHICS/GETTY IMAGES

最近、投資の世界ではいわゆるマグニフィセント・セブン(M7)以上に注目を集める話題はないようだ。読者はおそらく、そんなことは承知していると言うに違いない。

念のために記すと、ダウ・ジョーンズ・マーケット・データ・チームの同僚によれば、これら超大型の米国ハイテク株は、年初来7月2日までのS&P500指数の時価総額の増加額6兆2100億ドルのうち、4兆1800億ドルを占めるのだ。

これらマグニフィセント・セブン銘柄は時価総額加重平均の株式ベンチマークのなかで桁外れに重要になっているため、パイパー・サンドラーのストラテジストは3日にリポートで「S&P500指数を調査対象から外した」と書いた。米金融業界特有の表現で、負け組の株式の調査を止めることを指すもったいぶった言い回しだ。顧客向けリポートでより重要な点として強調されたのは、これらの銘柄の影響があまりにも大きく、S&P500指数がもはや「市場」を代表するとは言い難くなっていることだ。

歴史を振り返る

しかし、一握りの銘柄が巨大な影響力を発揮するというのは歴史的には珍しいわけでもなければ、永久に続くこともない。調査会社リサーチ・アフィリエイトの創設者で会長のロブ・アーノット氏は、原題が同じ1960年の映画『荒野の七人』で、主な登場人物7人のうち4人は死んでしまうのだ、と鋭く指摘する。2000年にバブルがはじけた際に、ドットコム時代を謳歌(おうか)し時代の花形ともてはやされたかなりの数の企業も、同じ運命をたどった。

実際、10年ごとに市場を支配する勝ち組企業が現れる。資本主義とテクノロジーこそが創造的破壊につながることを考えれば、一時代を築いた企業もやがてその地位を追われることになるのだ。ブリッジウオーター・アソシエイツがまとめた興味深い調査「米国市場の歴史」によれば、イノベーターと直面し、支配的な地位を維持できた企業や業界はほとんどないという。

20世紀初頭、鉄道は依然として支配的な交通手段だったが、1920年代以降は自動車や飛行機にその座を徐々に脅かされるようになった。化学コングロマリットは30年代から60年代まで市場で圧倒的な存在だった。1967年の映画『卒業』の有名な台詞「言いたいことはたった一つだ。プラスチックだ(プラスチックにはとてつもない未来がある)」は、化学産業の最盛期を反映した。

自動車は20年代から60年代まで市場の支配者だったが、それもデトロイトのビッグスリーが市場を日本の自動車メーカーに席巻(せっけん)されるまでの話だった。通信も旧AT&T<T>の独占が84年に解体されるまで市場を支配していた。石油企業は原油価格が70年代のインフレ期に高騰(こうとう)したため、80年代には市場で最も評価された株式だった。(面白いことに、エクソンモービル<XOM>とその前身の企業は1900〜2010年まで、10年単位で常に時価総額上位10銘柄に名を連ねていた。)

もちろん、ハイテク株はドットコムブームが2000年に頂点に達したときに圧倒的な勝ち組だった。ドットコムブームの時代は往々にしてマグニフィセント・セブンの時代と比較される時期だ。際立つのは。マイクロソフト<MSFT>がドットコムバブルを生き抜いてマグニフィセント・セブンに名を連ねる唯一のハイテク株であることだ。かつてのドットコム時代の覇者であったネットワーク機器大手シスコシステムズ<CSCO>や半導体大手インテル<INTC>は現在、時価総額上位銘柄にその名を見出すことはできない。マグニフィセント・セブンのうちの2銘柄、アップル<AAPL>と米半導体大手エヌビディア<NVDA>は、ドットコムバブル期なら中型株に分類されていただろう。

さらに印象的なのは、マグニフィセント・セブンの中に、ドットコムブームの時代にはまだ存在していなかったか、まだ創業初期だった企業も含まれることだ。アルファベット<GOOGL>のグーグル検索エンジンやメタ<META>(旧フェイスブック)のソーシャルメディアは存在すらしておらず、アマゾン・ドット・コム<AMZN>は単なる書籍とCD(コンパクトディスク)を販売する店舗に過ぎず、アマゾンのクラウドサービス部門であるアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)がサービス開始をするのはまだ何年も先のことだった。

過去の時代と同様に、今日のマグニフィセント・セブンのほとんどは(実現する確約のない)将来に対する約束が大きな原動力になっている。直近の話題はもちろん、人工知能(AI)を巡る将来である。アーノット氏が先週のインタービューで語ったように、市場はテクノロジーの潜在性を正しく評価してきたが、その時代に人気のあった銘柄に投資すればうまく行ったかと言えば必ずしもそうとは言い切れないのだ。

歴史が語る未来

歴史の教訓は、今日の市場のチャンピオンが必ずしも未来を支配するわけではないことだ。将来の勝ち組はまだ誕生さえしていないかもしれないし、特に最近では上場していないかもしれない。そのため、リスクは、S&P500指数のような時価総額加重平均型株価指数の時価総額上位の大型株は将来見通しが強気になったり、指数化の仕組みから価格が吊りあげられたりすることだ。パッシブ型のインデックス投資では必然的に、大半の資金が過大評価されている株式に振り向けられる。

ブリッジウオーターの調査リポートによると、その結果、典型的な米国の時価総額加重ポートフォリオの3分の1以上が、現在の「王者」に資金配分される。同社の定義によると、マグニフィセント・セブンのほか、米半導体大手ブロードコム<AVGO>や製薬大手イーライリリー<LLY>、米金融大手JPモルガン・チェース<JPM>が該当する。米国の上位10銘柄でグローバルポートフォリオの約20%を占め、シェアがここ50年余りで最大となっている。

ブリッジウオーターは「対立仮説として、過去1世紀におよぶ創造的破壊の威力を考えれば、イコール・ウエートのポートフォリオのリターンは時価総額加重ポートフォリオを上回り、より安定していた」と述べる。上場投資信託(ETF)は今やイコールウエートポートフォリオ戦略を実行する安価かつ簡便な手段を提供する。例として、インベスコS&P500イコール・ウエートETF<RSP>がある。より広範なエクスポージャーを考えるのであれば、600銘柄に投資するiシェアーズMSCI米国イコール・ウエーテッドETF<EUSA>やインベスコ・ラッセル1000イコール・ウエートETF<EQAL>がある。

強気相場でのパフォーマンスを求めて、多くの投資家が時価総額加重指数のファンドに殺到している。もしマグニフィセント・セブンが少しでもマグニフィセント(壮大)でなくなった場合、集中戦略は単純なイコール・ウエート戦略にかなわないだろう。

 

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