サンプル(過去記事より)

AT&T、メディア事業分離後の配当半減で株価急落

AT&T Stock Is Falling. CFO Says Spinoff Will Benefit Retail Shareholders.

CFOは長期的価値創出を強調

株主の45~50%が個人投資家

Pascal Desroches.Courtesy AT&T

通信大手AT&T<T>は1日、傘下のメディア事業ワーナーメディアを分離し、メディア大手ディスカバリー・コミュニケーションズ<DISCA>と統合させる計画で、AT&Tの株主に同社株1株につき新会社株0.24株を割り当てると発表した。これに伴い、手続き完了後に事業規模が縮小するAT&Tの年間配当見通しが1.11ドルと、2.08ドルからほぼ半減すると説明した。年間の配当金支払い総額は80億~90億ドルというガイダンスの下限となった。

この発表は投資家の失望を招き、AT&Tの株価は4.24%安の24.42ドルで引けた。

ワーナーメディアとディスカバリーの合併後にAT&Tの株主が受け取る新会社「ワーナー・ブラザース・ディスカバリー」の株式と調整すると、AT&Tの配当利回りは約6.3%となる。

AT&Tのパスカル・デローシュ最高財務責任者(CFO)は本誌とのインタビューで、AT&Tにとってこの案件を魅力的にするために、スプリットオフ(ワーナーメディアを分離して新会社とAT&Tの株式を交換した後、AT&Tが減資する)を選択した場合は、投資家がAT&T株を新会社の株に交換するインセンティブを大きくする必要があったと説明した。

ウォール街では、AT&Tがワーナーメディアのスプリットオフを実現するために「パーセンテージで1桁台後半」のプレミアムを上乗せすると予想されていた。しかし、デローシュ氏は、AT&Tの個人投資家が高利回りの株式を無配当のワーナー・ブラザース・ディスカバリー株と交換する十分なインセンティブを与えるには、12%以上の高いプレミアムが必要だっただろうと述べている。

デローシュCFOによると、AT&T株主のうち個人投資家が45~50%を占めると推定される。これは、他の大半の大企業の個人株主シェアを大きく上回っており、20世紀を支配した電気通信企業としての伝統と高い配当金を反映している。

同CFOは、サヤ取り投資家や短期トレーダーは、AT&Tと新会社の株式交換でサヤを取ろうと動いただろうし、多くの個人投資家はスプリットオフの存在さえ知らないかもしれないと述べた。

AT&Tの投資家は、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーの株式を保有し続けるか、売却してAT&Tの株式に再投資することも可能だという。

オーバーハングの可能性も

一つの問題は、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーの株式が、スプリットオフ後にオーバーハング(大株主などが株式を大量に売り出すとの観測が強まり、株価を下押す現象)に陥る可能性があることだ。AT&Tの株主は、分社化によりAT&Tの株式1株につきワーナー・ブラザース・ディスカバリーの株式0.24株を取得する。これは、合併後のワーナー・ブラザース・ディスカバリー株式のうちの17億株(約480億ドル、全株式の71%)に相当する。

個人投資家であるAT&T株主の多くは、無配当のメディア株の保有は望まず、投げ売りする可能性がある。

レイモンド・ジェームズのアナリスト、フランク・ロウサン氏は、AT&Tの1株当たりの年間配当金を1.15ドルと予想していた。AT&Tが発表した1.11ドルの年間配当は、同社が以前に示したガイダンスの下限だった。

デローシュCFOは、市場の反応に動じていないという。

同CFOは「われわれはこの組織を長期間経営し、長期的な株主価値を創造したいと考えている。短期的な変動には反応しない」と強調した。