ウォール・ストリート・ジャーナル
バロンズ・ダイジェスト

マーケットニュース

サンプル(過去記事より)

新生ワーナー・ブラザースはなぜ「買い」か

Warner Bros. Discovery Stock Is Now Trading. Why It’s a Buy.

ワーナーメディアとディスカバリーの合併完了

ストリーミング戦争で勝者に

Patrick T. Fallon/Bloomberg

メディア業界の新参者であるワーナー・ブラザース・ディスカバリー<WBD>は、ストリーミング戦争で勝者となる資産を持ち、株価は割安で投資家の関心を集めている。

合併に伴うコスト削減、豊富なコンテンツ、制作規模の大きさが、重い債務負担と短期的な高ボラティリティーに直面することになる。

AT&T<T>によるワーナーメディアのスピンオフと、それに続くディスカバリーとの合併は8日に完了し、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーが誕生した。新会社の株式は11日からナスダック市場で取引されている。

AT&Tの株主は1株につきワーナーの0.24株を受け取り、新会社を71%保有することになる。

RBCキャピタル・マーケッツのアナリスト、カトガン・マラル氏は「ごく短期的には、配当を目当てにAT&T株を保有していた株主や(ワーナーは配当を予定していない)、メディアではなく通信分野に投資していた株主から売り圧力がかかる可能性がある」とみている。

このような株主構成の変化により、ワーナーの値動きは今後数日間不安定になる可能性があるが、それは短期的な雑音にすぎない。ワーナーは朝方に上昇したものの、その後約3%下落し、23.75ドルで取引されている。AT&Tは7.5%高の19.60ドル。

このような短期的でテクニカルな要因がなくなれば、投資家はワーナーの長期的な可能性と株価に着目できる。最近の同業他社と同じように、ワーナーの焦点もストリーミングだ。

この合併は、HBOマックス(2021年末のストリーミング加入者数は7400万人)とディスカバリープラス(同2200万人)、さらに多くのケーブルテレビとワーナー・ブラザースのハリウッド・スタジオを統合するものだ。

HBOマックスはストリーミング分野の収益化で先行しており、広告付きで月額10ドル、広告なしで15ドルの課金を行っている。このサービスは今年、海外の数カ国で始まり、今夏には「ウエストワールド」の新シーズンや「ゲーム・オブ・スローンズ」のスピンオフ作品「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」などのコンテンツが公開される。

ディスカバリープラスにも広告付きと広告なしのチョイスがあり、ディスカバリー、HGTV、フード・ネットワークなどから提供されるコンテンツに注力している。ワーナーの経営陣は、時間をかけてHBOとディスカバリーのサービスを統合する方針だ。CNNも最近、定額制ストリーミングサービス「CNNプラス」を開始した。

「メディア業界のトップピック」

ドイツ銀行のアナリスト、ブライアン・クラフト氏は11日、ワーナーを「メディア業界のトップピック」に選んだ。評価は「買い」で、目標株価は現在の水準を90%近く上回る48ドルに設定した。

クラフト氏は「コンテンツの観点では、公開された作品を見ても、今後公開される作品でも、ワーナーはナンバーワンだ」と述べた。

数年後に全世界で2億人の加入者を獲得することは、ワーナーにとって絵空事ではない。ネットフリックス<NFLX>の現在の加入者数は2億2200万人に達する。

ワーナーのガイダンスによると、合併効果で年間30億ドルのコスト削減を見込んでいる。デービッド・ザスラフ最高経営責任者(CEO)が率いるチームは、2018年にディスカバリー・コミュニケーションズがスクリップス・ネットワークス・インタラクティブを買収した際、予想を大きく上回るシナジー効果を上げた。

ストリーミング事業は今のところ利益を上げていないが、他のストリーミング業者やワーナー傘下のケーブルネットワーク各社へのコンテンツ供与は利益を計上している。エバーコアのアナリスト、ビジェイ・ジャヤント氏は、ケーブルテレビ解約による圧力が続いているものの、合併によって再び利益が伸びる可能性があるとみている。

ジャヤント氏は、ワーナーのケーブル部門は今後数年間で1桁台半ばの増益を達成すると予想している。同氏は11日、ワーナーの評価を「中立」相当から「買い」相当に引き上げ、目標株価を40ドルに設定した。

ワーナーのバランスシートには、弱気派が指摘する多くの負債がある。合併完了時点の負債はEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)の約4.5倍に達する。経営陣はこれを2年以内により管理可能な3倍以下に引き下げる方針だ。

負債圧縮とストリーミング投資への道筋は、期待される利益によって開かれることになる。経営陣のガイダンスによると、2023年のEBITDAは140億ドル、フリーキャッシュフローは80億ドルを見込む。

ワーナーがこのガイダンスを達成できれば、2023年のEBITDAに対する時価総額は7倍以下となり、現在の株価は割安だ。パラマウント・グローバル<PARA>の2023年予想倍率は11倍、ウォルト・ディズニー<DIS>は16倍、ネットフリックスは19倍で、その差は歴然としている。ワーナーの倍率をフリーキャッシュフローで計算すれば、さらに割安になる。

 

ウォール・ストリート・ジャーナル
バロンズ・ダイジェスト
よく読まれている記事
バロンズ・ダイジェスト
記事一覧

過去分を表示する

関連製品