サンプル(過去記事より)

WEEKLY 2024年12月29日号

ドミノ株を買って、外食銘柄の落ち込みを吹き飛ばそう

Buy Domino’s Stock. It Can Beat the Restaurant Blues.

ドミノ株、一口食べる価値がある理由

株価上昇の兆し

Eilon Paz/Bloomberg

ピザ宅配大手のドミノ・ピザ<DPZ>の株価は、2024年は株式市場全体のパフォーマンスを下回ったが、今、その株価は上昇の準備が整いつつあるようだ。

2024年、ドミノの株価はわずか3.5%の上昇にとどまり、S&P500指数の25%上昇には遠く及ばなかった。ただし、この結果がドミノだけの責任とは言い難い。実際、レストラン関連株全体のパフォーマンスは低調だった。例外的に、メキシコ料理チェーンのチポトレ・メキシカン・グリル<CMG>は35%上昇したが、これは業界の中でも特異な例だ。他の主要な外食関連銘柄は苦戦を強いられており、例えば、ケンタッキーフライドチキンやタコベルを傘下に持つヤム・ブランズ<YUM>、ピザ・チェーンのパパ・ジョンズ・インターナショナル<PZZA>、バーガーキングの親会社であるレストラン・ブランズ・インターナショナル<QSR>など、多くの銘柄が軒並み不調に陥っている。業界全体の低迷ぶりは、S&P1500レストラン小分類指数(S&P1500指数の中でレストラン業界に属する企業を対象としたサブ指数)のパフォーマンスにも表れている。この指数は2024年にわずか4.2%の上昇にとどまった。

業界が直面している課題の一つは、消費者がお金を使う場所を慎重に選び始めたことだ。これにより外食産業全体で客足が減少し価格決定力が弱まっている。ドミノも例外ではなくこの逆風の影響を受けている。ドミノの既存店売上高は2024年第3四半期に前年同期比1.5%増と、第1四半期の同2.5%増から減速している。さらに調査会社ファクトセットによると、アナリストは第4四半期の既存店増収率が2%を下回ると予測している。

2024年の業績不振の主因は、経済の逆風

株価低迷への福音となるのは、ドミノの業績不振は経営陣の失策ではなく経済的圧力によるものと見られる点だ。投資銀行エバーコアのアナリスト、デビッド・パーマー氏は、ドミノの米国における既存店売上高の伸びが、過去3四半期で競合他社であるパパ・ジョンズやピザハットの大幅な落ち込みに比べて4~8%ポイント上回っていることを指摘している。パーマー氏は、第4四半期も同様の傾向が続くと予測しており、ドミノの米国における既存店売上高は前年同期比2%増を見込んでいる。

さらに、ドミノは配送サービスを強化することで競争力を高めている。食品デリバリーサービス大手のウーバーイーツ<UBER>およびドアダッシュ<DASH>と提携することで、複数のプラットフォームを通じて新たなオンライン顧客層へのリーチを広げている。既に開始しているウーバーとの提携はドミノブランドに新規顧客を呼び込む効果を発揮しており、2025年後半に導入予定のドアダッシュとのプログラムも、さらなる成長を後押しすることが期待されている。

またドミノは、独自のアプリを活用し、競争優位性を強化している。このアプリは、配達中の食品をリアルタイムで追跡できる機能を提供しており、その配達時間の予測精度がますます向上している。エバーコアの分析によれば、このアプリの月間アクティブユーザー数は数百万人に達し、競合のピザハット、パパ・ジョンズ、リトル・シーザーズといったピザ・チェーン大手の数倍に上るという。ドミノは、アプリから得たデータを最大限に活用しており、その情報を基に各ユーザーに最適なメニューオプションを提供できる。

アドバイザーシェアーズの最高執行責任者(COO)ダン・アーレンズ氏は、「ドミノは、よく整備された機械のようだ」と評価し、「ドミノのアプリ注文技術は、ピザ部門の競合他社数社よりもはるかに効率的だ」と語る。なお、アドバイザーシェアーズはその運用する上場投資信託(ETF)においてドミノ株を保有している。

今後の海外の回復、自社株買いと経営戦略

今後の成長の鍵を握るのは、海外市場だ。現在、海外店舗は主にアジアとヨーロッパに位置し、総店舗数の67%を占めているが、その多くが地域の景気低迷や、ドル高の影響を受けている。とりわけ、現地での売り上げがドル換算される際にはドル高により減少してしまう。しかし、この問題は既に市場で広く認識されており、2025年には、ヨーロッパ各国の中央銀行が金利を引き下げ、また消費者支出が回復するのに伴い、一部の国で景気が回復に向かう可能性もある。また、ドミノにとっては、最近の海外での業績不振が今後の業績比較において有利に働くことが予想される。LRTキャピタルマネジメントの創業者であるルーカス・トミキ氏は、「収益は伸びるはずで、海外に大きなチャンスがある」と語る。トミキ氏もドミノ株を長期間保有している。

ドミノは、今年開始した「ハングリー・フォー・モア」経営戦略のもと、店舗数を毎年5%拡大し、最終的には2028年までに現在の2万1000店から約2万5500店にまで増やす計画だ。さらにドミノはフランチャイズとテクノロジーに投資するとみられる。これらの取り組みに自信を持った経営陣は、総売上高が毎年7%ずつ成長するという長期見通しを再確認している。さらに、原材料費や人件費が依然として低水準にとどまっていることから、マーケティング費用の増額にもかかわらず、利益率は今年の18%から2027年には19%に改善する可能性が高い。

目標株価は約2割上昇の水準に

ドミノの経営陣は最近、自社株買いに年間約2億5000万ドルを費やしており、ファクトセットによると1株当たり利益(EPS)は2025年に6%、2026年に10%増加する可能性がある。TDカウエンのアナリスト、アンドリュー・チャールズ氏は、2027年には12%の成長が期待できると予測している。チャールズ氏はドミノ株の投資判断を「買い」とし、目標株価を515ドルに設定している。この目標株価は、23日(月曜日)の終値426.54ドルから20%超の上昇を意味する。

ドミノ株の現在のバリュエーションは現在の水準で妥当なようだ。具体的には、今後12カ月予想利益に基づく株価収益率(PER)は24.2倍で、3月に記録したピークの31.1倍を下回っている。また、ヤム・ブランズのPERが21.4倍であるのに対し、ドミノは3ポイント高いだけだ。過去10年間、ドミノのPERはヤム・ブランズよりも高い水準で取引されてきたが、これはドミノの年間利益成長率がヤム・ブランズのほぼ2倍だったためだ。さらに、企業価値(EV)/ EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)の倍率で見ると、ドミノ株は過去の平均を下回る水準で取引されている。加えて、S&P500指数のバリュエーションと比較してみると、通常、ドミノ株はS&P500指数に対して50%のプレミアムで取引されるが、現在はS&P500指数をわずかに上回る水準で取引されている。

RBCのアナリスト、ローガン・ライヒ氏は、ドミノのバリュエーションについて「割高ではない」との見方を示した。ライヒ氏は、ドミノ株の投資判断を「アウトパフォーム」とし、株価目標を500ドルに設定した。この目標株価は、現在の水準から17%の上昇を示唆している。

そろそろ「ドミノ・ピザ」への投資意欲が高まっているようだ。