サンプル(過去記事より)

WEEKLY 2024年10月13日号

時価総額1兆ドル未満のハイテク企業が狙い目

The Mag 7 Is So Yesterday. Play These 7 Instead.

マグニフィセント・セブンは過去のもの

まずは半導体関連銘柄に注目

Illustration by Glenn Harvey

投資対象となるハイテク企業の中には確立された事業基盤を築き、高い収益性を誇り、将来の成長が期待される企業が何百社もあるが、金融メディアではあまり注目されないことがよくある。

それらの企業を時価総額1兆ドル未満の忘れられたバレー(谷、企業群)と呼ぶ。市場の関心が集まるのはマグニフィセント・セブン(壮大な7社)と呼ばれるアップル<AAPL>、マイクロソフト<MSFT>、アルファベット<GOOG>、アマゾン・ドット・コム<AMZN>、メタ<META>(旧フェイスブック)、半導体大手エヌビディア<NVDA>、電気自動車(EV)大手テスラ<TSLA>ばかりで、あまり話題に上らないからだ。

しかし、時価総額1兆ドル未満の企業群の中にはバリュエーションは控えめだが、売上高や利益の成長余地がとても大きい企業がいくらか存在する。  

時価総額1兆ドル未満で割安なテクノロジー株を探すなら、まず半導体関連企業に注目するべきだ。半導体メーカーと、半導体製造装置を供給する企業の両方だ。もちろん、半導体業界で群を抜いているのはエヌビディアだ。しかし、エヌビディア以外で投資対象としてよく検討される半導体メーカーのブロードコム<AVGO>は、時価総額が約8050億ドルに上る。どちらも優れた企業だが、最近の水準と比べてかなり割高になっている。

代わって、今は注目されていないものの投資家が関心を持つに値する企業が3社ある。オランダの半導体製造装置メーカーASML<ASML>、米半導体大手マイクロン・テクノロジー<MU>、米半導体製造装置メーカーのラムリサーチ<LRCX>だ。3社の株価は6カ月前に比べて安い。さまざまな懸念が反映されているからだ。

懸念の一つは継続中の米中貿易戦争で、半導体や半導体製造装置の中国向け輸出に対する規制の強化につながっている。米国は規制の範囲を着実に拡大しており、それによってASMLなどの企業の、巨大な半導体市場である中国での商機が縮小している。しかし、この問題はトランプ前政権以来続いているもので、半導体メーカーは上手く対応してきた。もはや古いニュースと言っていいだろう。

さらに大きな懸念は、半導体市場の成長サイクルが終わりに近づいているという見方だ。ウォール街では、今後人工知能(AI)向けチップの成長が冷え込み、数四半期以内に半導体市場の勢いが鈍化し始めると予想されている。

しかし、このようなサイクルに対する懸念が最高潮に達したときに優良な半導体株を買うのは賢明な投資であることが繰り返し証明されている。近い将来、株式市場が半導体業界の必然的な回復に注目し始めれば、その頃には優良株を購入するにはすでに手遅れとなっているかもしれない。

また、業界特有のサイクルにこだわりすぎると、これら3社の価値を高めている重要な長期的な技術の進展を見逃すことになる。

マイクロンとDRAMの黄金期

マイクロンは、DRAM (記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリー)の黄金期を迎えつつある。AIはメモリーをより多く必要とし、DRAMメーカーにはより高速で大容量のチップが求められている。。また、AIはDRAMがコンピューターのCPUとより高度に連携する進化を促している。

この技術革新により、マイクロンはエヌビディアや他のプロセッサーメーカーと協力してそう遠くないうちに、より高度なDRAMである広帯域幅メモリー(HBM)を設計することになるだろう。その結果、マイクロンの市場での存在感が大きく高まる見込みだ。

ラムリサーチは、シリコンのエッチングやチップに化学層を堆積させる装置の開発を専門とし、メモリーチップの製造に特化している。DRAMの進化はラムリサーチにとっても追い風となるだろう。

ソフトウエア企業にも注目

半導体銘柄以外で見過ごされがちな成長株を探すのであれば、小規模のソフトウエア企業が最適だ。クラウド監視ソフトのデータドッグ<DDOG>は、ソフトウエア業界の中でもトップクラスの成長を誇る。今年の増収率は前年比27%と予想されている。来年は同23%に低下する可能性があるものの、多くのソフト企業が10%台超の成長達成に苦しむ中では力強い伸びと言える。

データドッグのバリュエーションは、今後12カ月間の予想売上高で時価総額を割った株価売上高倍率(PSR)で評価するのが望ましい。PSRは12.6倍と他の多くの株に比べて割高に見えるかもしれないが、6カ月前と比べ16%低い。

同様に、最近評価が下がっているが優れたソフトウエア企業がスノーフレーク<SNOW>だ。成長率がデータドッグと似た水準でありながら、株価は年初から約4割下落している。PSRは14倍から8.6倍へと低下しており高成長で、非常に健全なキャッシュフローマージンを備えた企業としてはかなり割安だ。

さらに、サイバーセキュリティーは企業の予算において常に優先順位の高い分野であるため、購入を検討する価値のある、ソフト業界で特別にニッチな存在だ。中でも注目すべきはジースケイラー<ZS>で、新興企業ながらも優れた経営陣を擁し、今後も年間20%以上の増収が見込まれている。現在、最も割安なテクノロジー銘柄の一つであり、PSRが9倍と過去6カ月~1年間に10~20%低下している。

復活したオラクル

時には、株価の割安感ではなく将来の成長に目を向ける必要がある。最後に紹介するのは、言わずと知れた有名企業だが最近新しい顔を見せ始めた、企業向けソフトウエア大手のオラクル<ORCL>だ。80歳で会長兼最高技術責任者(CTO)のラリー・エリソン氏は、まるで20代の若者のような活力で四半期ごとに事業を展開している。

オラクルはデータベースソフトを開発しているだけでなく、AIアプリケーションを含む、データベースやアプリを動かすハードウエアも提供している。大きな展望としては、売上高が今後数年間で2倍になる可能性がある。同社のクラウドコンピューティングインフラが初めて、クラウド事業のビッグ3(アマゾン、マイクロソフト、グーグル)に匹敵する実力を備えたからだ。

長期にわたって低迷していたが、エリソン氏はついに堅実な技術を成長の機会に変えることに成功したかもしれない。