ネットゼロと経済的リターンの同時達成めざす=サステナブル投資で新戦略-BNPパリバ・アセットのボー氏
2025年02月18日 08時00分

欧州を本拠とする大手金融グループの資産運用会社BNPパリバ・アセットマネジメント(本社パリ)のシニア・ポートフォリオ・マネジャー、ミシェル・ボー氏がこのほど来日した。旗艦ファンド「BNP Paribas Funds Euro Corporate Bond」の運用状況や、サステナブル投資を組み込んだ新しい運用戦略について語った。主なポイントは以下のとおり。
-旗艦ファンドの運用状況は
ボー氏 私は28年間、債券クレジット市場で運用に従事してきた。2015年からはサステナブルボンドやグリーンボンドの首席担当を務めている。4人のポートフォリオ・マネジャーと共に、旗艦ファンド「BNP Paribas Funds Euro Corporate Bond」など、300億ユーロの資産を運用している。
旗艦ファンドは投資適格債を投資対象としており、一貫してベンチマークを上回る運用成績を残してきた。パフォーマンスを要因分解すると、「銘柄選択」が大きく貢献している。ボトムアップの調査で銘柄を選別し、パフォーマンスを積み上げる。これが私たちの運用戦略のDNA(遺伝子)だ。
一つ一つの債券のクレジットを十分に深く調査し、最良の銘柄でポートフォリオを構築している。相対的な銘柄のバリュー見極めて、それを最大限に抽出してきた。アクティブファンドの運用成績を測るインフォメーション・レシオは、過去10年平均で1.13だった。同じカテゴリーの81戦略の中で14位という高い成績を残してきた。
-新しい運用戦略は
ボー氏 私たちは、温室効果ガス(GHG)の排出量と吸収量を差し引いて実質ゼロとする「ネットゼロ(NZ)」に整合性を持つ銘柄を組み込んだ新しい運用戦略「BNP Paribas Euro Corporate Bond Strategy With NZ : AAA」を立ち上げる計画だ。
旗艦ファンドの「BNP Paribas Funds Euro Corporate Bond」と同じような経済的なリターンを実現しつつ、同時に二酸化酸素(CO2)削減など温暖化防止につながる社会的リターンを追求する。
戦略名の「AAA」は、「Achieving(ネットゼロを達成中)」「Aligned(ネットゼロに整合済み)」「Aligning(ネットゼロに整合途上)」という三つの段階を指している。
800社以上の候補企業を、この戦略の独自のフレームワークに当てはめ、それぞれの企業のネットゼロ戦略と達成状況を見極める膨大な作業を行っている。
当社のサステナビリティ・センターには、ESGに特化した30人以上のアナリストが在籍しており、新興国を含めた4万社以上の企業のデータを分析し、債券だけでなく株式のマネジャーにも情報を提供している。こうしたデータも活用している。
-欧州債券市場の投資環境は
ボー氏 欧州経済は、減速するものの、リセッション(景気後退)に陥ることはないと予想している。2025年のGDP成長率は、年率0.8%程度で推移するだろう。欧州と米国のデカップリング(切り離し)が進んでいる。米国が海外製品に追加関税を課すことになれば、製造業は厳しい経済環境に直面するだろう。
欧州諸国はそれぞれに公的債務を抱えており、財政政策を出動する余地が小さい。ただ、欧州のインフレは沈静化しており、2026年には年率2%を割り込む水準へと低下するだろう。こうした中、欧州中央銀行(ECB)は、利下げを継続すると見られ、欧州債券の投資家にとって、追い風になると見ている。
欧州の経済環境は厳しいと申し上げたが、欧州企業はキャッシュを十分に持っていて、リファイナンスも順調にできている。ドイツの自動車各社も堅牢な財務基盤を持っており、格付けが引き下げられることはないだろう。
-注目のセクターは
ボー氏 欧州の周縁国といわれるイタリア、スペイン、ギリシアの銀行セクターをオーバーウエートにしている。不動産セクターも、金利低下の恩恵を受けるだろう。
昨年末までは電機通信などのディフェンシブ銘柄をオーバーウエートし、自動車セクターはオーバーウエートにしてなかった。しかし、ここに来て、これを逆転させて、自動車セクターの比率を高めることを検討している。
それに加え、当社のネットゼロ戦略については、現在のGHG排出量が大きくても、それを削減する計画を実行しているトランジション(移行)セクターにも投資を増やしている。具体的には、化学品製造業といった鉱工業セクター、天然ガスセクター等である。足元では相対的に高いクレジット・スプレッドが見られる企業となるが、企業がネットゼロに向けて対応を推進する中、そのスプレッドが縮小していく可能性もあると考える。そのため、投資収益の維持や拡大にも、この運用戦略は有効だと考えている。