ウォール・ストリート・ジャーナル
バロンズ・ダイジェスト

マーケットニュース

金融経済教育とライフプランが重要に=「金利ある世界」に戻った日本経済で-日本FP協会の白根理事長

2025年02月12日 08時00分

白根理事長

 日本ファイナンシャル・プランナーズ協会(日本FP協会)の白根壽晴理事長は2月6日にメディア説明会を開催し、ファイナンシャル・ウェルビーイングの実現に向けた協会の取り組みを紹介した。

 この中で「ファイナンシャル・ウェルビーイングを実現するには、国民一人ひとりのライフプランが確立され、充実することが必要になる」と強調。「それを支えるために、ファイナンシャル・プランニングの考え方の普及と、金融経済教育を通じた金融リテラシーの向上が重要になっている」と話した。主なポイントは以下の通り。

◆インフレにどう対応するか

 日本経済は「金利ある世界」に戻ってきた。「インフレにどう対応するか」というライフプランの考え方が必要になっている。

 今年の春闘は、大企業を中心に高い賃上げが期待されているが、雇用者の70%以上は中小企業に雇用されており、中小企業や非正規雇用の人が大企業並みの賃上げを期待するのは難しいだろう。

 一方、足元では物価上昇が続いている。全国消費者物価指数(CPI)で見ると年率で2.5%程度だが、生活実感としては、米や食料品、電気・ガスなど生活に欠かせない商品・サービス価格が値上がりしており、物価上昇に賃上げが追い付いていないと感じる人も多いのではないか。

◆相対的貧困率

 厚生労働省は国民生活基礎調査の中で、一定の基準を下回る可処分所得しか得ていない人の割合を「相対的貧困率」として算出している。最新データは2021年のものだが、日本は15.4%だ。およそ6人に1人が相対的貧困の状況にあり、可処分所得が年間127万円未満の厳しい生活に追い込まれている。

 こうした方々にとってこそ「ライフプランの見直し・充実」が喫緊の課題であり、金融経済教育の果たす役割は大きい。

◆ファイナンシャル・プランニングで生活を立て直す

 新しい少額投資非課税制度(NISA)になって、NISA口座数は2400万口座を超えたが、現在の相対的貧困率を考えると、「投資に回す余裕がない」という人も多いと思われる。また、大手企業の系列会社の人であっても、毎月の積み立て投資ができないように感じている。

 だからこそ、「ファイナンシャル・プランニング」と「金融経済教育」を提供して、家計を見直してもらい、そこで生まれた余裕資金を将来の備えとして資産形成していくことが大切だと思う。

◆金融経済教育の裾野拡大、FP技能検定が貢献

 日本において、金融経済教育の裾野は広がっている。厚生労働省が所管するファイナンシャル・プランニング技能検定は、2002年にスタートし、合格者の累計が290万人に迫っている。数字の上での話だが、日本人の40人に1人はファイナンシャル・プランニング技能検定に合格したという意味もあり、これが果たした役割は少なくないだろう。

 ただ、合格した段階で「一定の知識がある」という証明にはなるが、その後の知識やスキルの向上を保証する仕組みにはなっていない。そのため、金融経済教育をしっかりと継続し、浸透させる必要があると考える。

◆セミナーや個別相談の担い手

 昨年、金融経済教育推進機構(J‐FLEC)が創設され、これまでは金融庁や日銀をはじめ、金融・証券・保険などの民間の関係団体がそれぞれに独自に活動してきた金融経済教育を、一つに束ねる組織ができた。私たち日本FP協会も、当協会の会員であるCFP®・AFP認定者である18万人も、「いろいろ一緒にできることがあるのでないか」と大いに期待している。

 例えば、私たちの会員は全国47都道府県に活動拠点として支部を持っており、ファイナンシャル・プランニングに関する個別相談会やセミナーを行っている。私たちの協会員が、J‐FLECが各地で行うイベント等の活動を担う「認定アドバイザー」を育成したり、J‐FLECが行うセミナーに携わったりすることもできるだろう。

◆金融経済教育とファイナンシャル・プランニング

 財務省が発表する国際収支統計で見ると日本は、「貿易立国」から「金融立国」へと発展段階を変えた。さらに「投資立国」から「資産運用立国」へとシフトしようとしている。国民の金融リテラシー、すなわち金融経済教育のレベルが高まっていくことが、その礎(いしずえ)として必要だと思う。

 社会では「人的資本の充実」あるいは「ウェルビーイングの実現」に注目が集まっている。ウェルビーイングを構成する要素は、さまざまにあるが、「財務的・経済的な安全・安心」という意味では、ファイナンシャル・ウェルビーイングが大きな要素を占めるだろう。

 ファイナンシャル・ウェルビーイングを実現するには、国民一人ひとりのライフプランが確立され、充実することが必要になる。そして、それを支えるのが、「ファイナンシャル・プランニング」と「金融経済教育」だと考えている。

 

ウォール・ストリート・ジャーナル
オペレーションF[フォース]