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「リタイアメントに関する意識調査」を公表=退職前後世代で幸福度・資産・就労などの関係を探る-野村アセットマネジメント資産運用研究所

2026年05月15日 09時00分

(左から今村主席研究員、川嶋所長)(左から今村主席研究員、川嶋所長)

 野村アセットマネジメントは「リタイアメントに関する意識調査」をまとめた。「リタイアメント層(60代・70代)」と「準リタイアメント層(50代)」に分け、幸福度、資産、就労、資産寿命などを比較した。

 それによると、幸福度は、準リタイアメント層が最も低かった。将来のお金に対する不安が要因と見られる。お金の取り崩し方針を決めて資産寿命を把握にするなど、プランニングやシミュレーションの重要性が浮かび上がった。

 野村アセットマネジメント資産運用研究所長の川嶋昭臣氏と、主席研究員の今村宗嗣氏に話を聞いた。

◆資産運用領域に特化したシンクタンク

-資産運用研究所の活動は

川嶋所長 当研究所は、2020年に設置された資産運用領域に特化したシンクタンクだ。野村アセットマネジメントは05年から、「投資信託」等をテーマとした意識調査を実施してきたが、25年度から新たに「リタイアメント」に関する意識調査を実施した。

今村主席研究員 「リタイアメントに関する意識調査」は昨年10月に実施し、約1万1000人の回答を集計した。この中で、①意識(幸福度や将来の不安) ②資産と収入 ③就労 ④三つの寿命 ⑤お金の使い方-について調べた。

(出所)野村アセットマネジメント「リタイアメントに関する意識調査」(出所)野村アセットマネジメント「リタイアメントに関する意識調査」(クリックで表示)

◆準リタイアメント層の幸福度が低い

-リタイア前後の意識の違いは

今村主席研究員 一つ目の「リタイアメント層の意識」では、幸福度や不安について調査した。この中で、「非常に幸福」を10点、「非常に不幸」を0点として、自分の幸福度を評価してもらったところ、全体の平均点は6.4点だった。

 年代別に見ると、50代の準リタイアメント層が5.9点と最も低く、年代が上がるにつれて幸福度が上がる傾向が確認できた。金融資産と幸福度のクロス分析などから、お金の不透明が理由だと思われる。

    自身を取り巻く環境では「所得や資産」の満足度が低かった。また、将来の不安では「健康や病気」「介護」に次いで「生活のための収入」が3位に入った。

(出所)野村アセットマネジメント「リタイアメントに関する意識調査」(出所)野村アセットマネジメント「リタイアメントに関する意識調査」(クリックで表示)

◆リタイア後の収入、予想とギャップ

-資産と収入は

今村主席研究員 二つ目に「資産と収入」について調べた。お金の不安の原因は「見通しが付いていないためではないか」と想定し、そのことを確認した。

 調査の中で「リタイア時点で金融資産の目標金額を定めていたか」を尋ねたところ、「定めている」は全体の3分の1だった。目標を定めている人の平均金額は約4000万円だった。一方で、金融資産の保有額を尋ねたところ、約2000万円だった。目標と実際の資産額に開きが見られた。

 退職後の収入と支出について、現役時代と比較した割合を尋ねたところ、準リタイアメント層は平均で「現役時代の約6割になる」と予想した。一方、リタイアメント層に実際の状況を尋ねたところ、収入は現役時代の3~4割、支出は5~6割だった。収入については、予想と現実で大きなギャップが見られた。

(出所)野村アセットマネジメント「リタイアメントに関する意識調査」(出所)野村アセットマネジメント「リタイアメントに関する意識調査」(クリックで表示)

◆65歳超でも2~4割が就労

  -就労状況は

今村主席研究員 三つ目に就労状況を確認した。65~69歳で43%、70~74歳で27%、75~79歳で16%の人がそれぞれ働いていた。

 働く理由について、「生きがいのためか」、「生活資金を得るためか」を尋ねたところ、65~69歳では約6割が、75~79歳でも約4割が、「生活資金を得るため」と回答した。

 同程度の金融資産水準や収入水準の層で比較しても生活資金を得るために働いている人は生きがいのために働いている人より幸福度が低い傾向が見られた。ただし、働く理由は個々人の状況によって大きく異なり、意識を変えれば幸せになるといった簡単な話ではない。一つ指針になるとすれば、「貯蓄や金融資産がどの程度維持できるか」という資産寿命だと考える。

(出所)野村アセットマネジメント「リタイアメントに関する意識調査」(出所)野村アセットマネジメント「リタイアメントに関する意識調査」(クリックで表示)

◆「資産寿命が分からない」と幸福度が低い

  -生命・健康・資産寿命に関する意識は

今村主席研究員 「生命寿命」「健康寿命」「資産寿命」について見通しを持っているかを尋ねたところ、「生命寿命」と「健康寿命」はそれぞれ7割程度の人が「想定がある」と答えたのに対して、「資産寿命」は5割程度にとどまった。

 幸福度との関連を見ると、「資産寿命が生命寿命より短い人」は幸福度が6.4点だったのに対して、「資産寿命が生命寿命より長い人」は7.1点と幸福度が高かった。一方、「資産寿命が分からない」と答えた人の幸福とは6.2点と最も低かった。

(出所)野村アセットマネジメント「リタイアメントに関する意識調査」(出所)野村アセットマネジメント「リタイアメントに関する意識調査」(クリックで表示)

◆取り崩しの方針は「ない」が約8割

-お金の使い方は

今村主席研究員 「資産寿命」を把握するため、取り崩しなど「お金の使い方」について尋ねた。平均の取り崩し金額は年間約63万円で、金融資産額に対する比率は2~4%だった。

 取り崩しについては、「方針がある人」は1割程度とわずかで、「方針はない」とする人が約8割を占めた。取り崩しの方針がないので、資産寿命が分からない。資産寿命が分からないので、お金を使えないし、幸福度が低いことが考えられる。

 一方、資産継承の方針については、「自分で使い切る」「自分で使いながら、使い切れなかった分は法定相続にゆだねる」「誰にどれだけ渡すかを自分で決めて、残りは使い切る」を合わせて、約4割の人が「自分でお金を使う」ことを前提としていることが分かった。

川嶋所長 取り崩し状況を尋ねた設問では「分からない」と回答した人も多かった。こうした人は自分の収入が、年金なのか、働いた収入なのか、資産の取り崩しなのか、整理できておらず、将来を心配し過ぎて、お金を使えていないという懸念がある。金融機関がプランニングを提供することが必要だろう。

◆お客さまに寄り添うパートナー

-調査結果から示唆されることは

川嶋所長 いわゆる「老後2000万円問題」で老後に向けた資産形成の必要性が指摘され、実際にインフレで物の値段が上昇する中で、老後資産について過度に不安を感じている人が多いことが分かった。

 アドバイザーの活用や、金融経済教育の重要性について、考えさせられる調査結果だった。企業が確定拠出年金や退職に関するセミナーを開催したり、証券会社や銀行がコンテンツを充実したりするなど、情報提供の機会を広げていくことが大切だ。

 お客さまに寄り添うパートナーとなるようなアドバイザーがいれば、情報を分かりやすく整理し、公的年金や私的年金、少額投資非課税制度(NISA)をまとめて管理することで、「分からない」という状態を解消し、幸福度を高めることが可能だろう。

◆50歳になったら資産の棚卸し

今村主席研究員 当初は「リタイアメント層(60代・70代)」への提言をまとめることを想定していたが、予想以上に「準リタイアメント層(50代)」の不安が大きく、提言が必要だと感じた。

 準リタイアメント層に対しては「50代になったら資産の棚卸してみませんか」とアドバイスしたい。50代から資産形成を始めても、間に合うだけの期間がある。一番良くないのは「分からない」まま放置して、不安に思うことだ。

 60代・70代のリタイアメント層については「取り崩しのシミュレーションをしてみませんか」と呼びかけたい。試算結果によっては、お金が余ることが分かって、旅行の回数を増やすことができるかもしれない。

◆プランを立て、お金を楽しく使う

(出所)野村アセットマネジメント(出所)野村アセットマネジメント

川嶋所長 高齢者の方とお話しすると、何となく不安で、取り崩しをためらっている方が多い。ただ、シミュレーションを通じて現状を把握した上で、リスク許容度に応じた適切なリスクを取って、運用しながらお金を使うという考え方もある。

 きちんとしたプランを立てて、時間をかけて、クオリティの高い商品に分散投資することができれば、投資はギャンブルではなく、人生に必要な手段だと思う。国は、NISAを創設し、税制優遇措置を設けて、国民の資産運用を後押ししている。

 当研究所では書籍「いい人生だったと思えるお金の使い方」(TOPPAN)を3月31日に出版した。著名人の人生観やお金観、人生のデザインを紹介しながら、お金の不安に縛られ過ぎずに、経験がより豊かになる生き方を考えている。

◆退職前後層に向けてさらに情報発信

(出所)野村アセットマネジメント(出所)野村アセットマネジメント

今村主席研究員 金融経済教育を受けたことがある人の割合は、まだ1割に満たない状況だ。ただ、高校のカリキュラムに金融経済教育が取り入れられたことで、若い人を中心に改善の傾向に向かっていくだろう。

 ただ、資産の取り崩しのシミュレーションなど、退職世代向けの教育コンテンツは、まだ十分に伝わっていないので、教育機会と合わせて、セットで提供していきたい。

-野村セットマネジメントの取り組みは

 川嶋所長 野村アセットマネジメントでは2025年4月にリタイアメントソリューション部を新設した。老後のお金との向き合い方を理解し整理することで、できるだけお金を使わないようにするのではなく、これからの生活をより豊かにするためにお金を使うことに役立ててもらうため、スペシャルサイト「退職後の資産運用と資産活用」を開設した。

ライフプランニングについて解説したコンテンツと、60歳からの資産シミュレーションを提供している。

 

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