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WEEKLY 2021年4月18日号

ビットコイン・ブーム最良の投資先コインベース

Coinbase Is the Best Way to Play the Bitcoin Boom

暗号資産の本命プラットフォーマーが上場

コインベース上場

David Paul Morris/Bloomberg

コインベース・グローバル<COIN>は理想的なタイミングで株式を上場した。暗号資産(仮想通貨)市場の価値はこの2カ月で倍増し、ビットコインは活況を呈しており、機関投資家が参入を急いでいる。

同社は4月14日に株式を上場し、その日に時価総額はほぼ1000億ドルちょうどに達し、実績ベースの株価売上高倍率(PSR)は80倍となった。通常、これは長期投資家にとって赤信号を意味する。しかし、コインベースは本物だ。同社は、激しい競合にもかかわらず、競争優位性によって市場シェアを拡大してきた新興企業だ。

次の暗号資産下落局面で同社の株価も下落する可能性があるが、現在のバリュエーションは理不尽には見えない。実際、同社の株価が大幅に上昇する可能性があると考えるのには十分な理由がある。コインベースは従来型のブローカーや取引所ではなく、エリート集団である多面的なプラットフォーム企業に属している。同社が期待通りに取引手数料への依存から脱却すれば、その潜在力と業績は暗号資産市場と同じように急速に成長する可能性があり、これが高いPSRを支えている。

直近の株価は342ドルだが、調査会社モフェットネイサンソンのアナリスト、リサ・エリス氏は600ドルの価値があると考えている。これは、同社の2023年度予想売上高に、決済ソフトウエア企業のスクエア<SQ>の11倍よりも高く、電子商取引用プラットフォーム企業のショッピファイ<SHOP>と同じ水準のPSR18倍を適用したものだ。「(コインベースを)暗号資産テクノロジー企業と位置付け、長期的な見方をするなら、強気にならざるを得ない。同社は間違いなく極めて破壊的なテクノロジーを代表する企業であり、今や臨界点に達したモメンタムに支えられている」と同氏は言う。同社が単なるブローカーか取引所であれば、PSRは6〜8倍、すなわちチャールズ・シュワブ<SCHW>とナスダック<NDAQ>の間の倍率となる可能性があるが、コインベースはそれを超える存在である。

確かに、ビットコインは誰もがロビンフッドのような証券会社から購入できるが、ほとんどの場合、暗号資産システム内のトークンとして使用したり、利息を稼いだり、プラットフォームの外に移動することはできない。コインベースには、暗号資産の保有者が暗号資産を貸し出して利息を稼ぐことができる「ステーキング」など、急成長中の事業分野がある。また、最近ブロックチェーン(分散型台帳)・インフラ企業のバイソン・トレイルズを買収したことから、同社が「ブロックチェーン界のマイクロソフト・アジュールになる可能性がある」とエリス氏は言う。

ベンチャーキャピタル支援による堅実な成長路線

同社が2012年に設立された時、ブライアン・アームストロング最高経営責任者(CEO)は未知の世界に飛び込んだ。暗号資産には規制も市場構造もなく、その取り扱いには法的なリスクと風評リスクが伴っていた。2年後、最大のライバルが崩壊した。一時はビットコイン取引の70%を扱っていた東京を拠点とする取引所のマウントゴックスが突然、顧客のビットコインを85万BTC喪失した。

対照的に、コインベースはベンチャーキャピタルから資金を調達し、規制上の問題がないことを確認しながら成長する伝統的なアプローチを取り、規制されていない取引所よりも時間をかけて成長した。暗号資産取引を始める前の書類確認に要する時間に顧客が不満を持つこともあるが、そうした努力は報われている。

コインベースの2017年の資金調達ラウンドを主導したベンチャーキャピタルIVPのパートナーであるトム・ロベッロ氏は本誌に対し、「コインベースが米国のベンチャーキャピタルの支援を受けた新興企業であったという事実が、同社の成長軌道を変え、規制当局や立法当局との継続的な対話に基づく十分に規制された明るい経路をたどることになった」と語った。

コロンビア・ビジネススクールで暗号資産とブロックチェーンを長年教えているR.A.ファロークニア教授は、このしばしば面倒な規制上のプロセスが、今や他の企業にとって超え難い競争優位性となっていると語る。

幾つかの弱気シナリオと見通し

コインベースにも幾つかの弱気シナリオがある。暗号資産の複数の分野で規制が厳格化されるのは間違いない。既に米商品先物取引委員会(CFTC)は、同社が2015年から2018年までの取引について「著しい虚偽であり、誤解を招き、あるいは不正確な報告」を行ったと指摘し、コインベースはCFTCの主張を認否することなく、650万ドルを支払うことで和解した。

最も説得力のある弱気シナリオは、同社が取引手数料に依存しており、金融取引の手数料は競争が激化するにつれて減少するはずだというものだろう。しかし、ロベッロ氏は、「株式手数料からの類推だろうが、さまざまなサービスをまとめて提供する同社には当てはまらない」と言う。モフェットネイサンソンのエリス氏は、スクエアと電子決済サービス企業のペイパル・ホールディングス<PYPL>についても上場後に同様の議論がなされたが、これらの企業が参入する全ての分野を考えれば、そうした議論は今となっては古くさく感じると指摘する。

暗号資産の取引および保管サービスを提供することは、株式の取引を支援することとは大きく異なる。安全性と流動性の間のトレードオフは、危険を伴う綱渡りのようなものだ。暗号資産はインターネットに接続されていない「コールド・ストレージ」が最も安全だが、インターネットなしでは取引できない。コインベースは他の取引所が失敗する中、これまで絶妙なバランスを取ってきた。

投資家にとって、他の金融資産に重点を置く企業との大きな違いは、同社が猛烈な勢いで成長していることだ。2021年第1四半期の売上高は約18億ドルと推定されており、2020年通期の売上高を40%上回っている。投資銀行BTIGによると、世界の暗号資産市場に占めるコインベースのシェアは2018年の4.8%から11.3%に拡大している。ビットコインは今後下落することもあるだろうが、米国の暗号資産エコシステムで中心的な位置を占めるコインベースは、多くの収益源を活用できるはずだ。

 

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