サンプル(過去記事より)
バイオジェンの自社株買い、キャッシュの有効活用?
3月に続き50億ドル承認
長期的なバリュー維持に必要?
バイオジェン<BIIB>は19日夜、50億ドルの自社株買いを役員会が承認したことを報告した。3月にも同額の購入を認めており、10月下旬までに約21億ドルを費やしている。
翌20日の株価は1.2%上伸した。しかし、株購入に大量の資金を費やすのは、バイオジェンが長期的にバリューを維持するのに必要なことではないのかもしれない。
同社は今年、バイオテック部門に2回のショックをもたらした。3月に、アルツハイマー病を抑制する薬が試験に通らなかったと発表。10月には一転、米食品医薬品局(FDA)に承認申請することを明らかにした。
株価は3月、打ち切りの報を受けて325ドルから230ドル付近に下落。(10月に)復活が伝わると、300ドル近辺に反発した。
これらの出来事で、バイオジェンは、今の時価総額540億ドルの巨大企業というよりも、小資本のバイオテック一族、二元結果的な企業のようなものになってしまった。
FDAのこの先の対応についてアナリストらの間で見方は二分している。
バイオテック以外の主要製品は圧力下に
バイオジェンのバイオテック以外の分野は圧力にさらされている。2015年以来同社で最も売れている多発性硬化症治療薬テクフィデラは、ジェネリックの製造を目論む企業による、知的財産権をめぐる訴訟に直面している。SVBリーリンクのアナリスト、ジェフリー・ポージェズ氏は現在の訴訟が失敗に終わっても「今後、3、4年でテクフィデラのジェネリックを扱うことになるだろう」と分析した。そうなれば、テクフィデラに対する需要だけでなく、バイオジェンの多発性硬化症治療薬全般の売り上げに影響が出る可能性がある。
別の主要製品である、脊髄性筋萎縮症治療薬スピンラザは、ノバルティス<NVS>の遺伝子治療薬ゾルゲンスマとの競争に直面している。
バイオジェンは研究開発(R&D)費を削減してきている。ファクトセットによると、アナリストらは2019年の同社のR&D費を22億ドルと予想。これは新たに承認された自社株買いの半分にも満たない。また予想収入の15.6%と、18年の19.3%、17年の18.3%を下回る。
なぜバイオジェンはR&Dではなく、株価押し上げにキャッシュを使うのだろうか。
SVBリーリンクのジェフリー・ポージェズ氏は、アルツハイマー病抑制薬アデュカヌマブの成功に賭けるのなら、自社株買いは意味があると語った。「アデュカヌマブが効けば、会社の残り90%のオーナーへのリターンは増幅される」「目の前にチャンスがあるとみているのだったら、かなり有効なシグナルであり、資本配置戦略である」と語った。
一方で同氏は自社株買いの決定は、アデュカヌマブに倍賭けすることになり、想定外だったと指摘。「経営陣がしなければならないのは、アデュカヌマブ以外のものへの展開だ」と述べた。
アルツハイマー薬関連で費用増か
バーンスタインのアナリスト、ロニー・ギャル氏はバイオジェンの50億ドルの自社株買い戦略は、R&Dや買収への効果的な資金の利用方法が見つかっていないことを示唆していると分析。
また、自社株買いは「2020年にアデュカヌマブ関連の費用増が見込まれ、これが利益に及ぼす影響を打ち消す方法かもしれない」と語った。
自社株買いをすれば、利益が減少したり、利益増加ペースが鈍化したりしても、1株あたり利益の水準は維持できる。
バイオジェンの債務は60億ドル、現金・現金相当は44億ドル。