サンプル(過去記事より)
株価上昇は「ベア・マーケット・ラリー」か
モルガン・スタンレーのアナリストが警告
高過ぎるバリュエーション
株式市場はここ数日ミニラリーを楽しんでいるが、最近の上昇はより大きな下落局面の中の一時的な値上がりのように見える。
S&P500指数とナスダック総合指数が12日午後に日中取引の年初来安値を付けて以来、両指数はそれぞれ5.1%と6.7%反発している。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が、インフレとの戦いにおいて政策金利を一部の人が懸念するほど早く引き上げることはないと示唆したことが、上昇に拍車をかけることになった。
モルガン・スタンレーの米国株式チーフストラテジスト、マイク・ウィルソン氏は、この上昇が長続きするとは考えておらず、「またベア・マーケット・ラリー(弱気相場局面での一時的な上昇)が始まったようだ。これが一段落すれば、株価はさらに下落すると確信している」と述べた。
なぜ株価上昇をありのままに受け止めてはいけないのだろうか。まあ、株価が上昇したことは驚くことではない。市場は膝をついて買いを懇願しているように見えるほどボロボロだった。
S&P500指数が12日に付けた年初来安値は200日移動平均線を12%下回っており、長期トレンドから大きく外れた。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が始まった2020年3月の安値以来、200日移動平均線を最も大きく割り込んだのだ。
マクロ・リスク・アドバイザーズのチーフ・テクニカル・ストラテジスト、ジョン・コロボス氏は「市場は売られ過ぎだった」とみている。
市場は今すぐにでも叩き売られる可能性がある。この場合のカギとなるのは、ほぼ間違いなく高過ぎるバリュエーションだ。
「下振れの可能性も」
S&P500指数構成銘柄の12カ月予想PER(株価収益率)は17倍強で、年初の21倍強から低下している。しかし、この水準では十分に低いとは言えないかもしれない。
この水準では、S&P500指数に1ドル投資した場合の1株当たり利益(EPS)が5.8%となる。これは今年急騰した極めて安全な10年物国債利回りをわずか2.8%ポイントしか上回らない。モルガン・スタンレーによれば、この差は2008~2009年の金融危機以来の最低水準であり、投資家が株式に投資するリスクを補うにはあまり意味がない。
投資家がより高いリターンを期待して株式投資を手控え続ければ、バリュエーションは低下する可能性がある。ウィルソン氏のS&P500指数の目標価格は直近を約4%下回る3900で、PERは16.5倍となる。
この水準なら下げ幅はあまり大きくないように見えるが、もし市場のムードが悪化すれば大幅下落する可能性がある。ウィルソン氏は「われわれは依然として適正水準が下振れする可能性があると考えている」と語った。
S&P500指数が3837まで下落すれば、高値から20%下落した弱気相場となる。市場はまだ危機から脱していない。