サンプル(過去記事より)

ネトフリが貿易戦争から守られそうな四つの理由

Netflix Looks Insulated From a Trade War. 4 Reasons Why.

各国に溶け込みシェア首位、報復や代替困難か

安上がりな娯楽は不況に強い

Mario Tama/Getty Images

米動画配信大手ネットフリックス<NFLX>は近頃、国際的な企業のようなリスクに直面しているが、貿易戦争を最も少ないダメージでやすやすと乗り越えることができるハイテク企業かもしれない。

先週ドナルド・トランプ米大統領が最新の関税措置を発表して以降に株価が16%下がっているアップル<AAPL>のようなメーカーとは対照的に、ネットフリックス株は3%の下げにとどまっている。S&P500指数は同じ期間に9%下落している。

多くの大手ハイテク企業とは異なり、ネットフリックスは世界各国・地域の経済に溶け込んでいる。動画配信プラットフォームの同社を罰することは、魅力的な結果にはならないかもしれない。

それでもネットフリックスは、他のすべての企業と同様により大きな脅威に直面している。それは貿易戦争の影響で世界経済が深刻なリセッション(景気後退)に陥るという脅威だ。

ブラックロック<BLK>のラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は7日、ニューヨーク経済クラブで、「私が話すCEOの大半が、現時点で恐らくリセッションに陥っていると言うだろう」と語った。

ネットフリックスは、世界的なリセッションが起きれば会員をある程度失う可能性が高いが、安価な娯楽は伝統的に不況を乗り切り、繁栄さえしてきた。大恐慌は「ハリウッドの黄金時代」だったと多くの人が考えている。

「家にいてネットフリックスを見るのは、外食やイベント会場に行くよりも安上がりな夜の過ごし方なのは間違いない」とオッペンハイマーのアナリスト、ジェーソン・ヘルフスタイン氏は本誌に語った。

外国で作品調達や多額の投資

ただ、投資家は、貿易戦争が激化した場合の報復の脅威も考慮する必要がある。米国製品には正面から他国の照準が定められており、対抗措置には「デジタルサービス税」と呼ばれるものが含まれる可能性がある。ネットフリックスには既に幾つかの国で、現地の映画制作への追加的な投資義務とともに、この税が課されている。同税の税率は一般的に売上高の2~5%だ。貿易戦争においては、米国以外の国が税率を引き上げたり、他の国々が新たに同税を導入したりする可能性がある。

しかし、サブスクリプションがベースのネットフリックスは、アルファベット<GOOGL>傘下のグーグル検索やメタ<META>のフェイスブックのような広告を基盤とするサービスとは異なる扱いを受ける可能性がある。広告にかかる高い税金は消費者価格に転嫁されるかもしれないが、多くのコストの中の一つとして隠されているため、政治的にはより好都合かもしれない。

もっともサブスクリプションの場合、デジタル課税は直接的な値上げにつながり、ネットフリックスは値上げの理由を間違いなく伝えるだろう。そのため、デジタルサブスクリプション税は国内政治の面でマイナス材料になっている。

各国が新たに国内への投資要件を新たに課す可能性もあるが、そうした動きは実際には既に各国で大きな投資をしているネットフリックスを守る可能性がある。バーンスタインのアナリスト、ローラン・ユーン氏によれば、2020~2023年にネットフリックスは欧州で68億ドル投資し、11カ所の現地オフィスと制作拠点を維持した。

ユーン氏によると、ネットフリックスはまた、多くの外国コンテンツについてライセンス契約を結んでいる。ネットフリックスで配信されている全作品の60%は、米国外で制作されたものだ。「ネットフリックスがやっていることに近づいている他のプラットフォームはない」とユーン氏は述べた。外国の現地制作会社へのライセンス料は、各国がネットフリックスを罰することに慎重になるかもしれないもう一つの理由だ。

ネットフリックスは、国際的な米国製品の不買運動からも守られる可能性さえある。同社は競争するほぼすべての市場でシェア首位の動画配信サービスであり、現地のサービスでそれに取って代わることが難しい。ユーン氏によると、政府が自国文化の保護に多大な労力を注いでいるフランスでさえ、同国企業カナル・プリュスの会員数はネットフリックスよりはるかに少ないという。