サンプル(過去記事より)

WEEKLY 2025年3月2日号

米国株式市場はとりあえず天井を付けたか

Stocks Look Played Out. It’s Time to Shift Some Assets Abroad.

割安な海外市場に目を向ける時

S&P500指数は一時年初来マイナス

Spencer Platt/Getty Images

米国株の幸福な状態は長く続かなかった。

大統領選挙後から好調だった米国株式市場はトランプ大統領の就任日以降に陰りが見え始め、S&P500指数は28日の午前には年初来でほぼ横ばいとなった。さらに悪いことに、米国の株価指数は欧州やアジアの株価指数に年初来で出遅れることになった。これは、トランプ政権による規制緩和や減税への期待が薄れ、関税問題や失業などの懸念に取って代わられたためだ。トランプ大統領の目標はアメリカを再び偉大にすることかもしれないが、少なくとも投資家にとっては、その政策は米国以外への投資の回帰につながった。

エドワード・ジョーンズのシニア・グローバル投資ストラテジストであるアンジェロ・クルカファス氏は、「米国は例外だとするシナリオは行き過ぎていたかもしれない」と語り、2024年の米国市場が好調で、それ以外の国々が相対的に低調だったため、「海外株の売りに振り子が振れ過ぎた」と付け加えた。

米国株の売りはまだ始まったばかりかもしれない。先週の主要株価指数の動きを見ると、S&P500指数は1.0%下落して5954.50となり、ナスダック総合指数は3.5%安の1万8847.28となった。ダウ工業株30種平均は下落を免れ、1.0%高の4万3840ドル91セントで引けた。小型株のラッセル2000指数は1.5%安の2163.07で週末を迎えた。

米国株一人勝ちの状況が変わるか

先週の米国市場でも、人工知能(AI)関連株を買い上げてきた動きの巻き戻しを皮切りに、米国株優位の継続を否定する動きが見られた。堅調な業績発表にもかかわらず半導体大手のエヌビディア<NVDA>の株価は27日に8.5%下落したが、これは同社と他のマグニフィセント・セブン(M7)銘柄の見通しについて市場が興奮し過ぎていたことを示唆している。現在、パッシブ運用でインデックス投資を行っている投資家でさえ、AIの波に乗るハイテク株の比率を不健全なほど高い水準に放置しているように感じられる。

ボントベルの会長であるアンドレアス・ウターマン氏は「世界の株式への分散投資は価値があるかもしれない」と述べる。MSCIワールド・インデックスに占める米国株の比率は現在75%だとウターマン氏は指摘し、「これは行き過ぎで、普通はこの指数の半分程度だ」と語る。

景気に対する懸念も忍び寄っている。米連邦準備制度理事会(FRB)が重視する指標である個人消費支出(PCE)の物価指数は1月に前年同月比2.5%上昇と、市場の予想と一致した。その一方、2月のコンファレンスボード消費者信頼感指数は大幅に低下した。投資家は3月第1週に発表される製造業の指標と雇用統計を特に注目しており、マクロ経済面の弱さのさらなる兆候と、投資家が視野を広げるべきだと示すさらなる証拠を探ることになりそうだ。

海外株式と海外債券に投資妙味

海外の株式市場が割安なのも悪いことではない。今年の業績予想に対するS&P500指数の株価収益率(PER)が22倍なのに対し、ストックス・ヨーロッパ600指数のPERは15倍を下回る。米国以外の株式市場の復活には、ファンダメンタルズ面からも説得力のある理由がある。ホライズン・インベストメンツで調査部門の責任者を務めるマイク・ディクソン氏は、米国以外の市場が追い上げている理由として、ロシアとウクライナの戦争終結への期待と、中国の安価なAI技術であるディープシークの台頭を指摘する。ディクソン氏はリポートの中で、「海外投資は米国株が群を抜いている時にパフォーマンスの低下要因となり得るが、よりバランスの取れた市場環境ではポートフォリオのリターンを安定させるのに役立つ」と述べている。

海外の債券に対する投資にも活気が見られ始めている。上場投資信託(ETF)であるiシェアーズ・インターナショナル・アグリゲート・ボンド<IAGG>とバンガード・トータル・インターナショナル・ボンド<BNDX>は年初来1%近いリターンを上げ、どちらも現在の実績利回りが4%を超えているが、iシェアーズ・コア米国総合債券<AGG>の2.2%のリターンには出遅れている。バンガードの債券担当シニア・プロダクト・マネジャーであるレベッカ・ヴェンター氏は、投資家は債券投資の約30%を海外に投資すべきだという。ヴェンター氏は「世界の債券市場には、ファンダメンタルズが良好な投資対象が数多くある」と述べ、欧州の社債には欧州の株式と同様に、より良いバリューがあると指摘する。

このことは、米国内の資産を一挙に切り捨てる時期が来たということではない。M7を除く、いわゆるS&P493の銘柄の利益成長は勢いを増し、最近の利回り低下は米国債のトータル・リターンの押し上げにつながっている。しかし、米国が唯一の選択肢だと思っていた投資家に対して警鐘が鳴らされている。

パスポートを取り出す時だ。