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金融系スタートアップ企業が100社を突破=兜町のオフィスシリーズ「FinGATE」で-平和不動産

2025年02月26日 08時00分

(昨年10月に開設したコミュニティスペース”FinGATE CLUB”、東京都中央区)(昨年10月に開設したコミュニティスペース”FinGATE CLUB”、東京都中央区)

 平和不動産が進める日本橋兜町・茅場町の再開発プロジェクトによって開設された、オフィスシリーズ「FinGATE」に入居する金融系スタートアップ企業が100社を突破した。

 「FinGATE」には、「国際金融都市・東京」をプロモーションする官民連携の組織、一般社団法人東京国際金融機構(FinCity.Tokyo、中曽宏代表理事)が事務所を構え、日本に参入する海外企業がワンストップで相談や手続きができる、金融庁・財務局の「拠点開設サポートオフィス(Financial Market Entry Office)」が開設されている。

 東京証券取引所が所在する日本橋兜町・茅場町は、1999年に取引所の立会場が閉鎖され、街の活気が失われていたが、再開発プロジェクトによって、新興の資産運用会社やFintech等の次世代の金融サービスを切り開くスタートアップ企業など、「国際金融都市・東京」をけん引する組織・機能が集積する街に変貌し、再び、輝きを取り戻している。

 この日は、「FinGATE 感謝の会」が開かれ、多くの関係者でにぎわった。また、平和不動産の土本清幸社長とFinCity.Tokyoの中曽宏代表理事があいさつし、プロジェクトへの思いや、「国際金融都市・東京」のビジョンについて語った。主なポイントは以下の通り。

◆兜町を「カラフルな街」に変えていく-土本社長

(平和不動産の土本清幸社長)(平和不動産の土本清幸社長)

土本社長 私たちが推進している再開発プロジェクトの大きな柱は、「FinGATE」を通じて日本を変えていく一翼を担うことだ。そして、もう一つ、「兜町をカラフルな街に変えていく」という柱を立てている。

 かつては、東京証券取引所の立会場の活気が、この街のにぎわいだった。しかし、当時は日本人の男性証券マンばかりだったので、夏であればワイシャツ、冬であればダークブルーのジャケットというように、「単色のにぎわい」だった。

 私たちがこのプロジェクトで目指しているのは「カラフルな街」だ。男性だけでなく女性の皆さんも楽しめる。働くだけでなく、食事、買い物、アートを楽しんでいただく。そうした街に変えていきたいと進めてきた。皆さんの仕事はハードワークだと思うが、オフの時間も楽しめる街に変わってきている。

 本日の集いには、多くのテナント様をはじめとする関係者の皆さまにお集まりいただいた。この機会に、皆さま同士のコミュニケーションを深めていただき、一緒になってこの街から金融をアップデートし、資産運用立国を実現し、日本を変えていきたいと思っている。

◆「金融政策の正常化」が進む-中曽代表理事

(FinCity.Tokyoの中曽宏代表理事)(FinCity.Tokyoの中曽宏代表理事)

中曽代表理事 FinCity.Tokyoは、2019年の創設以来、ずっと「FinGATE」に居を構えてきた。ここを拠点に活動する仲間が100社を超えたことを、大変うれしく受け止めている。

 われわれを取り巻く金融経済情勢だが、日本銀行がYCC(イールド・カーブ・コントロール)やマイナス金利といった非伝統的な金融政策を転換し、政策金利の引き上げとバランスシートの縮小を2本柱とする、金融政策の正常化へと舵(かじ)を切った。

 現在の政策金利の水準は0.5%だ。これがどこまで行くかは、いわゆる中立金利次第だが、推計値によると1~2.5%ぐらいと言われている。それに向けて着実に金利は上がっていくのだろうと私は思っている。もう一つの柱であるバランスシートの縮小だが、日本銀行は580兆円ぐらいの国債を持っているが、ゆっくりと縮小していく道筋が、既に明らかにされている。

 これからの過程では、金利は、経済・金融情勢に応じて、よりダイナミックに動いていく世界が来ると思う。

 この間、企業においては資本コストと株価を意識した経営が定着してきている。家計については、少額投資非課税制度(NISA)の拡充を追い風に、「貯蓄から投資へ」の意識が高まっている。さらに政府は「資産運用立国実現プラン」に掲げられた諸政策を着実に実施している。

 私たちの眼前に広がっている金融資本市場は、錯綜(さくそう)する金融経済動向やトランプ米大統領の政策もあり、不確実性に満ちているけれども、見方によっては、それだけビジネスや投資のチャンスがあるということなので、いよいよ腕の見せどころが満載のエキサイティングな局面が控えていると言っていいのではないかと思っている。

 一昔前の兜町は、かけそばをかき込む時間を惜しんで、証券マンが取引所の立会所にひしめく熱気があった。夜は、焼きとり屋で相場談義に花を咲かすという、モノトーンの街だった。今は、ジャズがあり、アートのイベントが開かれるというように、きれいなカフェやレストランが立ち並んだ「カラフルな街」に変わってきたと思う。

◆「持続的な経済成長」「金融エコシステムの高度化」に貢献

中曽代表理事 FinCity.Tokyoは、設立から6年ほどになる。日本初の官民連携金融プロモーション組織だ。当初は30社くらいのメンバーシップだったが、今日では会員企業が約60社まで増加している。

 平和不動産様にも設立当時から参画いただいてきたが、こういった多様なプレイヤーの参画が東京の国際金融センター実現という我々のミッションの原動力となってきた。つい先日も、弊機構の旗艦イベントである「FinCity Global Forum」および「Tokyo Asset Management Forum」を、兜町の新たなランドマークであるここKABUTO ONEで開催させていただいた。弊機構のミッションとFinGATEシリーズの目指す街創りのビジョンとが共鳴するからこそ、これらのフォーラムを兜町で催す意義があると思っている。

(FinGATE TERRACE、東京都中央区)(FinGATE TERRACE、東京都中央区)

 私たちが目指す国際金融センターのモデルは、ニューヨークやロンドンのような、芸術と隣り合わせになった街だ。ブロードウエイも、ウエストエンドも、仕事の後に観劇したり、食事を楽しんだりできる。昼間の仕事は、数字に追われ、とてもストレスの多い世界だと思うが、仕事が終われば解き放たれて、芸術にひたるような街を目指したいと思う。

 我々の目指す東京の金融センターの機能だが、金融セクターだけの利益を追求するのではなく、サステナブルファイナンスの促進を通じた持続的な経済成長の実現や、新興の資産運用業者の参入促進を通じた日本の金融エコシステムの高度化を実現したい。日本と、日本のサプライチェーンを包含しているアジアに、金融面から貢献できるような、そんな金融センターを目指したいと思っている。

 われわれとしては「FinGATE」シリーズが、東京都の枠を超えて成長していくことを期待してやなまい。昨年、東京、大阪、福岡、北海道の4地域が、資産運用特区に認定されたが、それぞれが特色ある地域経済と有機的に結びつくことによって、日本全体の金融エコシステムを作り上げ、高度化していきたいと思う。

 立派なインフラができつつあるが、それに魂を入れるのは、現場で活躍している皆さんだ。縁あって「FinGATE」に結集された皆さまが、相互の刺激と研鑽(けんさん)を重ねる中で、新しい日本橋兜町の土地柄を作り、それが東京の新しいアイデンティティーになっていくのだと思う。

 

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