アクティブ運用の手法を紹介=株式・債券の6戦略、ファンドマネジャーが登壇-三菱UFJアセット
2026年03月25日 07時30分
(高鍋氏) 三菱UFJアセットマネジメントはメディア懇談会を開き、株式・債券の6戦略のファンドマネジャーがそれぞれの運用哲学や手法を紹介した。
高鍋朗 常務執行役員 運用部門長は、冒頭のあいさつで「年初から南米や中東などで地政学リスクが台頭している。運用環境の不透明性を高め、不安定な市場が今後も継続することで、資産運用立国の実現に向けた道筋の中で『試練の年』になる可能性もありうる」と述べた。
この日は、アクティブ・アロケーション・チームの石金淳エグゼクティブファンドマネジャーがグローバルマーケットの見通しを説明。続いて「海外グロース戦略チーム」、「日本コアバリュー戦略チーム」、「日本オポチュニティ戦略チーム」、「日本株グロース戦略チーム」、「国内債券総合戦略チーム」、「グローバル債券戦略チーム」を担当する6人のエグゼクティブファンドマネジャーが登壇した。主なポイントは以下の通り。
◆「投資家目線の運用」へ体制整備、運用領域を拡大
高鍋朗 常務執行役員 運用部門長=新NISAを背景にインデックスファンド「eMAXIS Slim」シリーズへの資金流入が加速しており、当社の運用資産残高は過去5年で約2.5倍と急拡大している(2025年3月末時点)。
一方で、アクティブファンドにも注力しており、25年4月には日本初のファンドユニット制を導入し、アクティブ運用のファンドマネジャーの人事・報酬制度を見直した。運用成果と賞与の連動性を高めることで、投資家と利益の共有化を図り、これまで以上に「投資家目線の運用」を行う体制へと整備した。
また、アクティブ運用の領域を、新たなオルタナティブ(株式・債券等の伝統的資産と異なる資産クラス)へ拡大している。具体的には、24年10月にMUFGグループが長年培ってきたクレジット投資に係るケイパビリティを当社に移転し、「クレジット運用部」を設立した。また、25年7月に「プライベートアセット運用部」を立ち上げた。それぞれ、私募投信やパイロットファンドの運用を開始している。
◆中東での紛争、長期化の可能性は低い
(石金氏) 石金淳エグゼクティブファンドマネジャー=2月末に米国とイスラエルがイランを攻撃し、中東で紛争が始まった。原油輸送の要衝であるホルムズ海峡の船舶航行が妨害されたことで、原油高・リスクオフの波乱状態が発生した。先行きの読みにくいマーケット環境が続いている。
当チームでは、中東の紛争が長期化する可能性は低いと考えている。紛争が小康状態になったり、何らかの停戦合意が結ばれたりすることで、マーケットへの影響は限定的にものにとどまるとするシナリオをメインに置いている。
紛争長期化する可能性が低いと考える理由は、以下の4点だ。一つは、紛争前からのインフレなどでイランの経済力が弱まっており、イランが大規模な軍事行動を継続することが困難なことだ。二つ目は、ホルムズ海峡の船舶航行を妨害し続けた場合、イラン原油の大半を購入している中国への輸出が困難となることだ。
三つ目は、この紛争を受けて、OPECプラスが増産の方針を示していることだ。サウジアラビアは紅海に通じるパイプラインを活用して、通常の6割程度まで生産能力を回復していると報じられている。四つ目は、米国がホルムズ海峡の船舶護衛と保険支援の方針を打ち出していることの意義は無視できないと考えている。
今回の紛争は、1973年の中東戦争と比較される。ただ、当時と状況が異なる点も多い。例えば、米国はシェールガスの生産により原油の輸出国に転じている。新興国の経済基盤も整備されている。日本を始めとしてエネルギー効率が大幅に向上している。1973年当時のように、世界中でインフレが起こり、世界経済がスタグフレーションに陥るといった事態は、避けられると見ている。
海外株式については、AI関連セクターが中長期に成長を持続するだろう。米国では減税の恒久化が行われ、金融政策についても中東情勢が落ち着けば、夏場以降、利下げが再開されと見ている。米国をはじめとするグローバルの株式市況は、上昇基調を継続するだろう。
日本株式については、高市政権が衆院選に大勝し、積極財政路線が継続されることに加え、17分野の成長戦略への投資を明示している。中東情勢の影響は避けられないが、1970年台のように原油に対して脆弱な状態ではなくなっており、株価の大勢は上昇基調にあると考えている。
◆海外グロース戦略チーム
(西氏) 西直人エグゼクティブファンドマネジャー=中長期的な企業の成長性に着目した投資を一貫して行っており、直接取材を重視した運用スタイルを続けている。
われわれの運用チームは、4人のシニア・ファンドマネジャーが業種セクターを分担し、新規公開株(IPO)から中大型株まで広範な領域をカバーしている。過度にセクターにこだわりすぎることのない投資機会の追求と、専門性の活用のバランスを取っている。また、直接の投資対象ではないが、未上場企業のCEO等に面談することで、米国の最先端の技術に触れている。
銘柄選定に当っては、業界の成長性に加えて、個別銘柄ごとの「競争力」と「成長性」、さらにその成長性の「持続性」を重視している。市場の予想(コンセンサス)は3年以上先のものが少ないことから、株価は長期の業績予想と持続性まで反映していないことも少なくない。
このため「長期目線で業績を評価し、長期間保有する」というスタイルによって、超過収益の獲得が可能だと考えている。短期的な予想やノイズに基づく株価変動よりも、長期的に成長が続くような銘柄に投資し、利益成長の「幹」の獲得を重視している。
米国株式の魅力は、相対的に強い人口動態と大きな市場、イノベーションとそれを支えるエコシステムを持っていることだ。長期的にみて、これらの中で崩れているものは無い。2025年はITが株価をドライブした。26年は、資本財のような景気循環の銘柄に物色が広がっている。生成AIでは、投資先が徐々にアプリケーションに広がっていくだろう。
米国では、変化が起きるとそこから新しい産業やイノベーションが生まれる。中東情勢の緊迫化が短期の不安定要因になっているが、われわれのチームはその中に見られる変化に着目し、新しい産業を探している。
◆日本株コアバリュー戦略チーム
(畑澤氏) 畑澤巧エグゼクティブファンドマネジャー=低PBR(株価純資産倍率)に着目するトラディショナルなバリュー投資とは異なり、チームが考える「真の企業価値と市場価格とのギャップ」を割安度と定義し、投資している。
われわれのチームは、独自の分析で「収益の質の変化」や「利益水準の変化」を見出すことで、今の株価には織り込まれていない「真の企業価値」を発見する。「マーケットは、個別企業の自助努力による非連続な変化や、社会の構造変化を織り込むことができない」と考えており、そこを超過収益のチャンスとしている。
具体的には、個別企業を調査する「ファンダメンタルズ・アプローチ」に加えて、経営者の視点に立って非連続な変化を予想する「マネジメント・アプローチ」と、企業と継続的な対話を行う「エンゲージメント」によって、市場が織り込んでいない個別企業の変化を捉えることを目指している。
例えば、企業改革の中で持ち合い株の解消が進んできた。これまではクライアントが株主というケースが多かったが、株主構成が変化する中で、クライアントに適切なコストの負担を求めることが可能になり、マージンの適正化が進んでいる。
この戦略は、外部環境に依存しないアルファ(超過収益)を積み上げていくことを目指している。過去の運用実績を見ると、不透明感の強い市場の中でも、安定的に超過収益を稼ぎ出してきた。
これからも、日本では「健全なインフレ」と「コーポレートガバナンス改革」が進んでいくだろう。この二つは、日本企業を「勝者」と「敗者」に分けると考えており、個別企業の変化に着目したこの戦略は、今年も十分に機能していくと考えている。
◆日本株オポチュニティ戦略チーム
(友利氏) 友利啓明エグゼクティブファンドマネジャー=「バリュー/グロース」といったスタイルや「大型/中小型」などのサイズにとらわれることなく、「企業価値を大きく動かす変化」に着目し、アルファ(超過収益)を追求する戦略だ。
具体的には「利益を伸長させる変化」や「バリュエーションを伸長させる変化」、あるいはその両方に着目している。例えば、新商品・新サービスの展開や、事業ポートフォリオ改革、利益率の改善などだ。
こうした「企業価値を大きく動かす変化」を適宜・適切に特定し、市場での「変化」の浸透度合いをきちんと把握しようとしている。これを把握することで、マーケットに織り込まれていない「株価を動かす変化」を見つけることができる。
チームでは毎日、証券会社の大量のセルサイドレポートを読み、国内外の決算をチェックするなど網羅的な調査を行うことで、オポチュニティを逃さないしくみ作りを構築している。
◆日本株グロース戦略チーム
(小島氏) 小島直人エグゼクティブファンドマネジャー=メガトレンド(将来的に不可避と考える社会構造の変化)を起点に、さまざまな成長市場を分析し、その中で大きな成長が期待できる企業を精査し、特に高い本源価値を持つダイヤの原石と言える企業を厳選して投資している。
メガトレンドとして「脱炭素社会」「デジタル化」「人口の高齢化」の三つを、今世紀半ばにかけて続く大きな潮流と考えている。この三つのメガトレンドのソリューションとして、例えば、電気自動車やAI、自動運転などのさまざまな成長市場が生まれ、育つと考えており、その一つ一つを丁寧にリサーチしている。
成長市場や企業分析に当っては、少なくとも5年以上の長期の視点で、企業の成長ポテンシャルが花開く時の利益水準を試算した「理想の時価総額」を「本源価値」と定め、メガトレンドの恩恵を受ける企業を分析している。
企業分析に当っては①市場成長力 ②企業成長力 ③競争優位性 ④収益性 ⑤マネジメント力-の五つの視点で、分析の解像度をアップしている。ヨットに例えると、良い風が吹くルートを探し、その海域にマッチしたヨットとヨットマンを見付けることが、ダイヤの原石を見付ける近道になし、その確率も高まるだろう。
高市政権がゴールデンウィークに向けて「日本成長戦略」をまとめていくことに並走して、私たちも成長市場を分析した地図を随時ブラッシュアップして、次のダイヤの原石を発掘するためのリサーチを続けていく。
◆国内債券総合戦略チーム
(氏原氏) 氏原圭作エグゼクティブフェロー債券運用第一部長=日本債券のインデックスをベンチマークとし、独自の金利戦略やクレジット戦略をもとに超過収益の獲得を目指すアクティブ運用を行っている。
債券運用で一般的に行われている「金利予測」に依存しない運用が、この戦略の特徴だ。将来の金利水準予測を当て続けることはとても難しいことだ。さまざまな情報が心理的なバイアスを生み、投資判断を歪める原因となることがある。心理的なバイアスを排除し、規律を持った運用ができるように、運用のフレームワークを作った。
当ファンドでは、ファンドマネジャーが経験的に持つ投資アイデアを投資環境判断モデルとして定量化し、このモデルをベースに規律ある投資行動を行うことで、市場参加者の少数派になっても大胆にリスクを取ることが可能になる。また、事前に定めたルールに基づきロスカットを実施することで、判断ミスがおきやすい逆行時の投資行動をサポートし、大きな損失を回避することができる。
2025年は、モデルがショート(金利上昇)方向のシグナルを出していた。高市政権誕生の金利上昇局面でデュレーションを短期化していたことや、上半期に超長期債が売られる局面で同ゾーンをアンダーウエートしていたことがプラスに働いた。
現在の運用モデルのアウトプットは、金利戦略についてショート(金利上昇)を示しているほか、クレジット戦略については、ロング(投資環境良好)を示唆している。
◆グローバル債券戦略チーム
(舩津氏) 舩津大輔エグゼクティブファンドマネジャー=グローバル国債のベンチマークを上回ることを目指し、格付けがA格以上の信用力が高い国債に投資している。
債券や為替市場は、短期的には多くの要因で変動するが、中期的にはグローバルな景気のサイクルに伴って変動すると考えている。このため景気サイクルや類似局面での市場の挙動を分析の起点として市場の変化を捉えるとともに、中長期的な観点から安定したキャリー収益を積み上げることで、超過収益を獲得することができると考えている。
債券価格は、株価のように大きく上昇することはなく、投資したお金が元本で返ってきて、さらに利息の収入が入ってくる。中長期的に利息収入等のキャリーを積み上げていくことを重視している。
為替・金利・スプレッドの各戦略を超過収益の主な源泉として、戦略の確信度や相関などを考慮した分散投資により、安定した収益の獲得を目指している。
◆積極的な情報発信で、投資家の不安に応える
(大久保氏)大久保隆常務執行役員 運用副部門長=お客さまの大切な資産をお預かりしている観点から説明責任をしっかり果たしていきたいと考えている。特にこのようにマーケットが不透明な環境の中では、不安に思うお客さまもいらっしゃると思うので、積極的に情報発信していきたい。



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