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アセットマネジメントOne、DCセミナーを開催=制度拡充で、加入者の拡大が期待される「確定拠出年金」

2026年02月13日 07時30分

(杉原社長)(杉原社長)

 アセットマネジメントOneは、「DCセミナー2026~先進事例から読み解くDC運営の新潮流~」を、運営管理機関大手のみずほ銀行と第一生命保険、米国の大手資産運用会社であり運管大手でもあるティー・ロウ・プライスの日本法人との共催で開催した。昨年に引き続き、第2回目になる。

 アセットマネジメントOneの杉原規之社長は、開会あいさつで「DC制度は大幅な制度拡充が予定されており、大きな転換点を迎えている」と述べた。

 4月に企業型確定拠出年金(DC)のマッチング拠出で、加入者掛け金の制限が撤廃される。さらに2027年1月からは、企業型DCと個人型DC(iDeCo)の拠出限度額が引き上げられる。iDeCoについては加入可能年齢が引き上げられる。

 セミナーでは、日本のDC制度の現状を分析し、課題解決に向けた提案が行われた。また、海外の事例や国内の事業主の取り組みが紹介された。

◆「心理面」「金銭面」「仕組み面」で課題

(伊藤氏)(伊藤氏)

 第1部は、アセットマネジメントOneの伊藤雅子氏(執行役員 企画本部副本部長 兼 未来をはぐくむ研究所長)が、「職域での金融経済教育取り組みへのヒント~5か国(日・米・英・豪・加)調査を踏まえて~」をテーマに講演した。

 伊藤氏は、共同で研究しているティー・ロウ・プライスが昨年6~7月に、日米英豪カナダの5カ国で実施した「2025年 老後資産形成に対するグローバル意識調査」を紹介し、日本の課題を三つ挙げた。一つ目は、心理面だ。日本は、家計管理や老後資金準備のストレスが大きく、退職に対する期待や自信が、5カ国の中で最も低かった。

 二つ目は、金額面だ。日本ではDC掛け金の拠出など、老後資金準備が十分な水準ではないと評価している人が多い。三つ目は仕組み面だ。会社や運営管理機関に対する情報サービスに対する評価が、5カ国の中で最も低く、あまり使われていない。また、OECDの調査を見ると、公的年金のネット所得代替率は5カ国の中で最も低い。

◆福利厚生のど真ん中に「社員の資産形成の支援」を置く

 伊藤氏は、老後不安の原因について「日本の雇用環境が、メンバーシップ型からジョブ型へ変化し、雇用が流動化・多様化する中で、従来からの社会保障制度に対する人々の不安が高まっている。公的年金の所得代替率が低いのに、職域年金での積み上げが弱く、個人任せの構造がある」と分析した。

 その上で、「これからは、会社が福利厚生制度のど真ん中に『社員の資産形成の支援』を置いて、『職域での支えを強化する』という発想の転換が必要だろう」と主張した。

◆「ライフプラン」「ゴールセッティング」「人的資本開示」

 確定拠出年金をめぐっては、2027年1月から企業型DCやiDeCoの拠出限度額の引き上げが予定されている。「今年は、会社のDC制度を見直したり、従業員に対する継続教育を徹底したりする、大チャンスの年になる」と強調し、三つの提案を挙げた。

 一つ目は、「ライフプラン・リタイアメントプランを考える機会の提供」だ。ライフプランニングによって、資産形成を行う動機や納得感を育むことができる。工夫し、真剣に伝えることで、意識と行動を変えることが期待される。

 二つ目は、「生涯安心のゴールセッティング」だ。欧米では、目標貯蓄額を設定し、進捗状況をモニタリングすることが重視されている。例えば、自社の給与制度や資産形成の制度を前提に、多くの社員に有効なモデルプランを策定してみるのはどうだろうか。退職直前の手取り収入に対して、「目指すべき所得代替率」を設定してみるのも一案だ。

 三つ目は、「人的資本開示に直結する『見える化』の推進」だ。従業員エンゲージメントの向上は、企業の生産性を高め、持続的成長を可能にする。

 ウェルビーイングは、「健康」「働きがい・キャリア」「お金」で構成される。このためDCの継続教育で育まれる金融リテラシーは、ウェルビーイングの中核に関わる重要な領域になる。伊藤氏は「お金のウェルビーイングは、人的資本の一つとして『見える化』し、企業として責任をもって支援すべき領域になっていくだろう」と強調した。

◆2027年度中に「DC運用の見える化」がスタート

「米大手運営管理機関×人事コンサルから学ぶ!時代を先取る加入者向けソリューション」

 第2部は「米大手運営管理機関×人事コンサルから学ぶ!時代を先取る加入者向けソリューション」をテーマに、パネルディスカッションが行われ、ティー・ロウ・プライス・ジャパンの横川雄祐氏(機関投資家アドバイザリー部 リレーションシップ・マネジャー)と、マーサージャパンの永島武偉氏(年金コンサルティング部シニアアクチュアリー)が講演した。

 2027年度中に「DCの運用の見える化」がスタートする。プランごとに内容を公表することで、他社プランとの比較を可能にする。開示項目は現在、検討中だ。

 厚生労働省は、その目的について「加入者・受給者等の企業年金の担当者が自社の企業年金の理解を深めるとともに、他社との比較を通じ、よりよい企業年金の運営につなげていくこと」としている。

◆米国はコンフィデンスナンバーで、老後の不安を解消

(横川氏)(横川氏)

 ティー・ロウ・プライス・ジャパンの横川氏は、老後に向けた資産形成の状況を「見える化」する先行事例として、米国のDC加入者に同社が独自で提供している「コンフィデンスナンバー」を紹介した。

 「コンフィデンスナンバー」は、退職時の給与の75%相当を定年時から年金として受け取ることができる確率を試算したものだ。加入者の年齢、DCの掛け金や資産配分に加えて、公的年金やその他の資産口座の残高、金利・インフレなど1000通りの将来シナリオなどに基づいて計算する。

 「コンフィデンスナンバー」は、サイト上で、データを入れ替えてシミュレーションすることが可能で、例えば掛け金を増やしたり、資産配分を変更したりすることで、どれくらい達成確率が上昇するか試すことができる。画面上で手軽にシミュレーションできるので、資産運用を考えるきっかけを提供し、老後準備を促すことが期待される。

 事業主にとっても、自社のDCプランの加入者の状況を把握する総合指標として活用できる。さらに、同業他社等と比較することで、自社の年金プランの競争力を確認することができ、改善策を考えることができる。

◆ウェルビーイング向上で、社員の生産性、創造性を高める

(永島氏)(永島氏)

 マーサージャパンの永島氏は、ウェルビーイングについて「『心身ともに良好で満たされた状態であること』であり、フィジカル(肉体的なもの)、メンタル(精神的なもの)、ソーシャル(社会的なもの)、ファイナンシャル(金融・経済的なもの)と、多面的な要素を含んでいる」と定義した。その上で「物価高など『お金に関する環境変化』、転職の増加など『キャリア観の変化』から、ファイナンシャル・ウェルビーイングの支援が求められている」と指摘した。

 また、企業が社員のファイナンシャル・ウェルビーイングを支援する意義について、「社員の経済的安定性を高めて、生産性や創造性を高めることに加えて、自らのキャリアプランを考える中で、日々の業務に挑戦的に取り組み、ビジネスサイドにポジティブな影響を与えることが期待される」と述べた。

 社員の「ファイナンシャル・ウェルビーイングを支えるポイントについて、「現在の収支管理」「将来への資産形成」「リスクへの備え」「意思決定に必要な知識・アドバイス」の4点を挙げた

 永島氏は、DCの運営状況を測る指標として、「『情報提供』の分かりやすさやアクセスのしやすさ、セッション参加率やマッチング件数などの『行動』、キャリア自律度や経済的安心感といった『アウトカム』を注視していくことが大切だ」とアドバイスした。

◆社員の自助自立を支援する令和型モデルに転換

(成井氏)(成井氏)

 第3部は「社員の意識や行動の変容を促す取組み~ヤマトグループの実践事例より~」をテーマに、ヤマト運輸の成井隆太郎氏(働きやすい職場作り推進部長 兼 社員福祉センター課長)が講演した。 

 同社は全国に拠点があり、社員の3分の1がセールスドライバーだ。集合研修を実施したり、パソコンを活用したりした支援は、難しい。福利厚生について、社員の意識と行動を変える取り組みを行った。

 一つ目は、福利厚生の基本方針の見直しだ。例えば慶弔見舞金に代表されるような「共助共済型の昭和型モデル」から、社員が自ら考え選択することを支援する「自助自立支援型の令和型モデル」に変更した。

 従来の福利厚生は、画一的なライフスタイルを前提としたが、多様なライフスタイルに適したものを目指した。この中で、金融リテラシーは中心的な役割を担っている。一人一人のライフスタイルに合わせて、知るだけでなく、使いこなすことが重要になるためだ。

 二つ目は、「制度への不信」「金融リテラシーの壁」「労働環境の制約」という三つの課題を乗り越えるため、ソフトとハードの両面から取り組んだ。例えば、ハード面では企業型DCの商品ラインナップを見直した。加入者の利益を第一に考え、長期運用や分散投資の視点に立って、商品追加と除外を行った。

 ソフト面では、新入社員研修や管理職研修などのタイミングに合わせてDCの研修を充実させた。また、教育コンテンツを紙媒体から動画に進化させた。さらに、社員の個人アドレスに直接メールを送信するなど伝達方法を革新した。

 このほか「Eラーニング」「福利厚生のポータルサイト」「24時間対応のAIサポート」により、学習から問題解決まで、自己解決型のラーニング・エコシステムを構築し、全てを個人のスマホで完結できるようにした。

 成井氏は「平凡なことでも地道に粘り強く続ければ『非凡』になる」と指摘。「サービスや制度を変えると、社員の行動が変わり、意識が変わる。『Plan→Do→Check→Action』を繰り返すことで、スパイラルに制度運営の質を高めることができる」と激励した。

 

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