サンプル(過去記事より)

テイラー・スウィフトの新作アルバム、恩恵を受けるのは

A New Taylor Swift Album Is Coming. That’s Music to These Stocks.

ユニバーサル・ミュージック、スポティファイなど

ウェブサイトで真夜中に発表

Carlos Alvarez/Getty Images for TAS Rights Management

12日の午前0時近くに、スウィフティーズ(米人気歌手テイラー・スウィフトの忠実なファン層の呼称)は、この世界的スーパースターがもうすぐ新作アルバムを発表するという手掛かりを求めてインターネットを探し回った。彼らは正しかった。

米東部時間午前0時12分に、スウィフトは12枚目のスタジオアルバム「ザ・ライフ・オブ・ア・ショーガール」のニュースを自身のウェブサイトに投稿した。そこには3時間前にカウントダウンが表示されていたが、それ以上の情報はなかった。

インスタグラムに12日投稿されたポッドキャスト番組「ニュー・ハイツ」のクリップの中で、スウィフトは、中央にオレンジ色の自身のイニシャルをあしらったブリーフケースを開けて、ぼかしの入った新作アルバムのビニールカバーを見せ、新しいテーマカラーをほのめかした。

このポッドキャストのホストを務めているのは、スウィフトの交際相手のトラビス・ケルシー選手(フットボールチーム、カンザスシティー・チーフスのタイトエンド)とその兄ジェイソン・ケルシーさん(フィラデルフィア・イーグルスの元選手)だ。11日の投稿で、彼らのインスタグラムのアカウントは、13日に放送される次のエピソードのゲストとしてスウィフトが登場すると示唆していた。

ツアー実施ならさらなる経済効果

多くの企業がスウィフトの新たな音楽から利益を得る立場にある。モーニングスターのアナリスト、マシュー・ドルギン氏によると、スウィフトの後ろにいるレコード会社のユニバーサル・ミュージック・グループ<UMG>は、ストリーミングと出版事業からの収益の分け前を得る。ただ、スウィフトがマスター音源を所有しているため、最近米国での上場を申請した同社が得られる収益は限定的なものになる可能性がある。

ピーター・スピノ氏率いるウルフ・リサーチのアナリストチームは、スウィフトの録音された音楽作品の販売からユニバーサルが受け取っている額を推計4000万~8000万ドルとしている。

昨年12月の米紙ニューヨーク・タイムズの報道によると、「エラズ・ツアー」は興行収益が史上1位のツアーになり、全世界のチケット売上高が20億ドルとなった。同ツアーは米経済も拡大させ、米旅行協会によれば、100億ドルの押し上げ効果があった可能性が高い。一部のファンがこのショーに参加しなかったとしても、これにはチケットの売り上げ、食品への支出、キャラクター商品、旅行やこのイベントに関連するその他の費用が含まれている。

CNBCによると、2023年に行われたエラズ・ツアーのチケットの平均価格は約1100ドルだった。「スウィフトがツアーをやれば、チケットは高値で売り切れになる。それは消費者の予算外にある特別な機会だからだ」とスピノ氏は本誌に語った。

アメリカン大学のカラ・レイノルズ経済学部長は、裁量的支出を切り詰めているこうしたファンでさえも、スウィフトの商品や録音作品の購入を増やすと見込まれると語る。新作アルバムのポスター付きのレコード、カセット、CDの価格は13~30ドルで、既にスウィフトのウェブサイトに掲載されている。

レイノルズ氏は歴史的な例として口紅を挙げ、景気が下降する中でも、消費者は良い気持ちにさせてくれる製品の購入を増やすと指摘。「『そうだ、休暇に1000ドルかける余裕はないけれど、このテイラー・スウィフトの新しいセーターなら買える』といったような状況を実際に目にするかもしれない」と本誌に語った。

ツアーが行われることになれば、ライブ・ネーション・エンターテインメント<LYV>傘下のチケットマスターやVIPパッケージ、オンライン手数料を通じたさまざまな収入の流れが強まる可能性がある。エラズ・ツアーが米景気の浮揚効果をもたらした可能性があるが、この世界的イベントによる2023年のライブ・ネーションの総売上高への寄与度は1%未満だとスピノ氏は述べた。

スウィフトは、音楽配信サービスを手がけるスポティファイ・テクノロジー<SPOT>に約8400万人のリスナーを持ち、同サービスでのストリーミング数は1000億回を超えている。同社は昨年12月、直近のアルバム「ザ・トーチャード・ポエッツ・デパートメント」を含むスウィフトの音楽作品の2024年のストリーミング数が260億回を超えたと明らかにした。

スポティファイのプレミアムサービスの収益モデルには、すべての楽曲の無制限ストリーミングが含まれているため、モーニングスターのドルギン氏は、スウィフトのアルバムだけではスポティファイの価格決定力や契約社数を押し上げることはないとの見方を示した。だがこの新作アルバムは、同社が根っからの音楽ファン向けに今後導入する、チケットを早く入手できるといった排他的な特典付きのより高額なプレミアムプラン「スーパーファン層」を勢い良くスタートさせる可能性がある。

ドルギン氏は「突然、熱狂的なファンにアピールしようとする場合にその中心にいてほしいと思うのが彼女だということは、私にとっては非常に納得がいく話だ」と語った。