サンプル(過去記事より)

WEEKLY 2025年4月27日号

カトリック教会、投資運用を近代化

Pope Francis Modernized the Vatican’s Investment Program

教皇庁資産管理局(APSA)、教義に基づく運用で成果

類似運用方針のETF(上場投資信託)にも注目

Illustration by Elias Stein

21日に88歳で死去したフランシスコ・ローマ教皇の遺産の一つは「財政」だ。カトリックの総本山バチカンの投資は利益を上げた。これは教皇が率いた教会の価値観に沿う社会的価値に注力した成果と言える。

教皇庁資産管理局(APSA)は2023年、投資によって約4600万ユーロの収益を上げ、3790万ユーロの教会の経費を賄って、残りは利益として計上した。APSAは資金を国内外の証券と債券に投資し、さらに「教会に対してコンサルティング、財務ソリューション、資本市場へのアクセスを提供した」と述べた。

この利益は2022年比で40%超増加した。2022年には教会がカトリック投資家向けに「信仰に基づく投資指針」を発表していた。その指針は、人工妊娠中絶や避妊、ポルノ、アルコールや他の依存性物質の過剰使用、兵器、死刑、鉱業などに関与する企業には投資しないと定めていた。教会は、ESG(環境、社会、企業統治)の要素の多くには、カトリックの教義と一致するものがあるとの考えを示した。

APSAは具体的な保有銘柄を公表していないが、グローバルXが運営するS&P 500カトリック・バリューETF<CATH>は、「カトリックの価値観に反する活動に関与する企業」を除外している。CATHは標準的なS&P500指数連動ファンドに近く、主な保有銘柄にはアップル<AAPL>、マイクロソフト<MSFT>、エヌビディア<NVDA>などが含まれている。

2022年は不調で、APSAは600万ユーロ超の損失を計上した。2023年は「リスクと中長期的収益性の間で適切なバランス」を維持したと説明されている。2024年については、今夏に発表されるリポートが注目される。(編集注:こちらの記事は4月22日配信の「カトリック教会、ESG投資で多額の利益」のアップデート版となります)。

先週の出来事

市場動向
週明け、トランプ米大統領がパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長を再び非難し、S&P500指数が2.7%下落。ドルは下落し、金、ビットコイン、円、ユーロが上昇した。その後トランプ氏はパウエル氏への攻撃発言を撤回し、ベセント米財務長官は貿易戦争を巡る米中の緊張関係は「ごく近い将来」に和らぐとの認識を表明。米中関係の緊張緩和への期待感とFRBによる利下げ観測を受けて株価は上昇に転じたが、中国側が交渉の事実を否定すると株価は下落した。 週間ベースでは、ダウ工業株30種平均(NYダウ)は2.5%、S&P500指数は4.6%、ナスダック総合指数は6.7%それぞれ上昇した。

企業動向
ハーバード大学が連邦政府を提訴し、また約10億ドルのプライベート・エクイティ(PE)ファンドの持ち分の売却交渉に入った。電気自動車(EV)大手テスラ<TSLA>の四半期利益は前年同期比71%減少し、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は5月にテスラに復帰すると表明した。米食品医薬品局(FDA)が明確かつ協調的な規制戦略を打ち出し、この強気のシグナルを受けてバイオテクノロジー株が急騰した。半導体大手インテル<INTC>が従業員を20%超削減すると発表した。スイス拠点の製薬大手ロシュ<ROG>とノバルティス<NVS>は、いずれも米国で大規模な投資を行うと発表した。欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会が、反トラスト法(独占禁止法)違反でアップルに5億7100万ドル、メタ<META>(旧フェイスブック)に2億2800万ドルの制裁金を科した。アップルはインドへのiPhone(アイフォーン)生産移管を加速させた。航空機製造大手ボーイング<BA>の四半期損失は予想より小幅となったが、中国からの締め出し(ボーイング製航空機の使用禁止や納入停止など)が懸念材料となっている。グーグルを傘下に持つアルファベット<GOOGL>の利益は前年同期比46%増加した。

M&A(合併・買収)など
・フィナンシャル・タイムズ紙は、中国政府系ファンドが米国のプライベート・エクイティ・ファンドから投資資金を引き揚げていると報じた。
・銀行規制当局は、米銀行持ち株会社キャピタル・ワン・ファイナンシャル<COF>によるディスカバー・ファイナンシャル・サービシズ<DFS>の買収(353億ドル、株式交換方式)を承認した。
・ブルームバーグによると、ドラッグストア・チェーンのライトエイドが2度目の連邦破産法第11条の適用申請を目前に控え、実質的な清算型の倒産手続きを検討していると報じた。

今週の予定

4月29日(火)
第1四半期決算シーズンは本格化し、S&P500指数構成銘柄の約3分の1が決算を発表する予定、今シーズンで最も忙しい週となる。29日は飲料大手のコカ・コーラ<KO>とクレジットカード会社のビザ<V>、30日はメタとマイクロソフト、5月1日はアマゾン・ドット・コム<AMZN>、アップル、米製薬大手イーライリリー<LLY>、マスターカード<MA>、2日には石油大手シェブロン<CVX>とエクソンモービル <XOM>の決算発表で週を締める。

4月30日(水)
米商務省経済分析局(BEA)が3月の個人消費支出(PCE)物価指数を発表する。エコノミストの予想は前年同月比2.2%の上昇で、2月を0.3%ポイント下回る。また変動の大きい食品とエネルギー価格を除いたコアPCEは前年同月比2.6%の上昇と予想され、2月は同2.8%の上昇だった。米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ指標として重視するコアPCEの上昇率がこの予想通りであれば、年率ベースでは2021年3月以来の最低水準。

5月2日(金)
米労働省労働統計局(BLS)が4月の雇用統計を発表。コンセンサス予想では、非農業部門就業者数は前月比13万人増(3月の22万8000人増から減少)、失業率は横ばいの4.2%の予想。

統計と数字

1300億ドル:金融サービス分野での2024年米国貿易黒字。世界貿易戦争の脅威にさらされる。
3521%:カンボジア製ソーラーパネルに対して米国が課した関税率。東南アジア4カ国に対する関税の中で最高率。
23%:2024年における中国の自動車輸出台数の増加率。台数ベースでは640万台に達し、第2位の日本を50%超上回った。
360万件:2024年における米国の出生数。2023年比で1%増加したものの、人口置換水準とされる女性1人当たり2.1人には依然届かない。