FinCity Global Forum~トランジションファイナンス・東京の挑戦

脱炭素社会の実現には、トランジションファイナンスの拡充が不可欠です。
ウクライナ情勢や供給制約の深刻化を背景にして、気候変動対応の戦略に世界的な見直しが進む中、トランジションの重要性は一層高まっています。
東京は、製造業の集積するアジアの国際金融センターとしての役割を持ち、トランジションファイナンスの面でアジアと理解を共有しながら欧米との橋渡しをも担うことが期待されています。
このフォーラムでは、将来に向けた展望や官民双方が取り組むべき課題について考えます。サプライチェーンファイナンスの展開やデジタル金融技術の応用、といった課題に派生した視点を加えながら、国内外より政策と実務の主役を担うリーダーを招待して議論を行います。

開催概要はこちら

Overview

主催
一般社団法人 東京国際金融機構(FinCity.Tokyo)
本イベントは、東京都の「国際金融都市・東京」構想に基づく金融プロモーション事業の一環として開催します。
開催日時
2023年2月2日(木)13:30~17:50
※会場ではフォーラム終了後、ネットワーキングを開催いたしました
開催方法
  • ハイブリッド開催(会場参加オンライン参加
  • 日本語、英語同時通訳
参加費
会場参加、オンライン参加、ともに無料(事前登録制
会場
KABUTO ONEホール&カンファレンス(東京都中央区日本橋兜町7-1)
会場アクセス
会場ホームページ https://kabutoone.tokyo/#access

お問い合わせ
時事通信社マーケット局セミナー事務局
mk-seminar@jiji.co.jp

Program

開会挨拶13:30-13:35

東京都知事

小池 百合子

プロフィールをみる

テキストで読む要約

FinCity Global Forum「トランジションファイナンス・東京の挑戦」が令和5年2月2日、東京都中央区日本橋兜町のKABUTO ONEホール&カンファレンスで開かれた。脱炭素社会に向けた展望や取り組むべき課題について国内外における政策と実務のリーダーたちが幅広い視点から議論した。 開催に先立ち、小池百合子・東京都知事が「世界は今、気候危機エネルギー危機など大きな危機に直面し、脱炭素への移行に向けたトランジションファイナンスの重要性に改めて注目が集まっている。このフォーラムがトランジションファイナンスを一層推し進め、脱炭素社会の実現に繋がることを期待している」などとあいさつした。

パネルディスカッション①13:35-14:25

東京がアジアのハブとなるために

テキストで読む要約

  • 急がれるライフスタイルの大転換
  • 日欧の意識差に戸惑いも
  • 環境整備でニッポン突出
  • どうする東京活性化…リカレント教育などアイデア満載

要約全文を読む

4人のパネリストはトランジションファイナンスの現状などについて各国の実情を踏まえて語った。

急がれるライフスタイルの大転換

小野氏は「日本の目標『温室効果ガス46%削減』達成にはライフスタイルも含めた大転換と多額の資金が必要」と指摘。その上で「鍵を握るのは金融面や政策面でのサポートだが、ロードマップが策定されるなど官民挙げた取り組みが行われている」と説明した。

日欧の意識差に戸惑いも

マテイ氏は「EUではサステナビリティへの移行が鍵になる」としてEUタクソノミーを中核とした戦略などを紹介。欧州で事業展開する岩永氏は「日本とは意識の違いがある」と言い「カーボン負荷の高い企業への投資は悪という目が光る中で取り組まねばならない」と語った。

環境整備でニッポン突出

大嶋氏は「アジアではここ2年ほどで急速に拡大し、とりわけ日本の会社の調達が突出している」と言い、背景に「政府による環境整備の効果が非常に大きい」と解説した。

どうする東京活性化…リカレント教育などアイデア満載

また、東京活性化策として小野氏は「日本の実践をアジアの実践に」と主張。マテイ氏は「消費者の需要をフィンテックに向けて拡大するなど民間部門の取り組みが重要」と語り、岩永氏は「金融人材のリカレント教育」を求めた。大島氏は「ステークホルダー間の相互理解が必要」と提言した。

パネリスト

環境省 地球環境審議官

小野 洋

プロフィールをみる

アムンディ・ジャパン チーフ・レスポンシブル・インベストメント・オフィサー

岩永 泰典

プロフィールをみる

三菱UFJ銀行 常務執行役員
ソリューション本部長

大嶋 幸一郎

プロフィールをみる

駐日欧州連合代表部
通商部 一等書記官

ノーラ・マテイ

プロフィールをみる

モデレーター

日本経済新聞社 論説委員
兼 編集委員

小平 龍四郎

プロフィールをみる

基調講演14:30-14:40

金融庁におけるトランジション・ファイナンスの取組みについて

内閣府副大臣(金融担当副大臣)

藤丸 敏

プロフィールをみる

テキストで読む要約

  • 巨費と官民連携が不可欠
  • 投資額150兆円
  • 企業開示など4分野で後押し

要約全文を読む

巨費と官民連携が不可欠

世界各国で近年、異常気象が繰り返し発生しており、一因として温室効果ガスの排出の問題が上げられています。そのため日本を含む各国は2050年の脱炭素を目指して取り組んでいます。しかし全ての産業がすぐに実現できるわけではなく、莫大な資金と官民の連携が不可欠です。

投資額150兆円

政府はグリーントランスフォーメーション(GX)を推進するため今後10年間に官民合わせて合計150兆円の投資を行うと宣言しています。

企業開示など4分野で後押し

トランジションファイナンスを促すために金融庁は現在、4分野に取り組んでいます。
第1は企業開示の充実で、気候変動や人的資本といったサスティナビリティの情報を有価証券報告書に記載するよう府令を整備し、2023年3月期からの適用を目指しています。第2は市場機能の発揮です。日本取引所グループは昨年7月、ESGに関する債権の発行や取引を促すためESG投資情報を集約する情報プラットフォームを立ち上げました。
第3は金融機関の機能発揮で、昨年10月、脱炭素等に向けた金融機関等の取り組みに関する検討会を設置しています。そして第4が専門人材の育成です。金融関係団体などと連携し新たな民間資格試験の創設の支援や大学での事業の拡充支援等を進めていくことにしています。

パネルディスカッション②14:45-15:25

発行体からの問題意識と取り組み

テキストで読む要約

  • 資金調達6000億円
  • CO2削減状況をwebで開示
  • トランジションボンド発行300億円
  • 現行ビジネスで存続可能か

要約全文を読む

トランジションファイナンスについて3人のパネリストは政府や発行体の立場からロードマップ策定の経緯や取り組みなどを報告した。

資金調達6000億円

分野別の技術ロードマップについて井上氏は技術の進展や政策の動向を踏まえながら不断に見直す考えを示し「資金調達実績はモデル事業も含め6000億円程度まで増えてきている」と解説した。

CO2削減状況をwebで開示

酒入氏は自社の取り組みについて「脱炭素戦略に基づき2種類のトランジションファイナンスを実行している。2030年度のCO2排出原単位の削減状況を外部機関の検証も受けながらウェブサイトで開示する」と話した。

トランジションボンド発行300億円

手塚氏は「300億円のトランジションボンドを発行した。風力発電の特殊な鋼材や電気自動車の電磁鋼板、CO2を削減できる商品に使われる鋼材のビジネスにも投資する」と語った。

現行ビジネスで存続可能か

また、足達氏は「今のビジネスのままで存続しうるのか」と質問。酒入氏は「電力の安定供給を確保しながら発電燃料を、CO2を一切排出しないアンモニアや水素に置き換える」と主張。手塚氏は「ゼロカーボンで鉄を作る技術の開発」などと説明した。ただ、実現には膨大な資金を要することから両氏は進捗状況の開示やしっかりとしたリターン、政府や関係者、金融機関による協力の必要性を強調した。

パネリスト

経済産業省 産業技術環境局 環境金融企画調整官

井上 峰人

プロフィールをみる

JFEスチール 専門主監(地球環境)

手塚 宏之

プロフィールをみる

JERA 取締役副社長執行役員 財務・経理管掌(CFO)

酒入 和男

プロフィールをみる

モデレーター

日本総合研究所 常務理事

足達 英一郎

プロフィールをみる

基調講演15:30-15:40

新しい資本主義とグリーン国際金融センター

内閣官房副長官

木原 誠二

プロフィールをみる

テキストで読む要約

  • 格差や貧困の拡大、新たな分断の目も
  • 賃上げなどでバージョンアップ
  • 最大のテーマは子育て支援
  • 投資をどう呼び起こすか

要約全文を読む

格差や貧困の拡大、新たな分断の目も

グローバル化は二つの大きな課題に直面しています。一つは格差や貧困の拡大であり地球温暖化などの環境問題です。放置すると民主主義も自由主義も大きな危機に瀕します。二つ目は新たな分断の目が生まれてきていることです。

賃上げなどでバージョンアップ

グローバル化のバージョンアップには投資や官民連携、規制の再構築、賃上げの4点が重要です。投資は公的大学ファンドやスタートアップ5カ年実行計画など、官民連携は投資促進を図り、規制の再構築はカーボンプライシングで取り入れる規制等支援一体型の投資促進が大切です。物価高に打ち勝てるような賃上げの実現を促します。

最大のテーマは子育て支援

今年の最大のテーマは子育て支援です。脱炭素に向けた経済社会、産業構造改革(GX)を加速させ、グリーン国際金融センターの実現に向けても取り組みます。

投資をどう呼び起こすか

重要なのは排出事業者が脱炭素を実現するトランジションに向けた投資をどう呼び起こすか。研究開発や設備投資に向くような取り組みを強めたいと考えています。

岸田政権は原子力政策の転換や防衛力の強化など待ったなしの課題にしっかりと取り組むことをテーマにしています。新しい資本主義の実現とトランジションを中心とした国際金融都市「東京」の実現に向けて頑張ります。

パネルディスカッション③15:50-16:40

金融仲介機関の果たすべき役割と展望

テキストで読む要約

  • 重要な目利き力
  • デザイン力も
  • 中堅企業のスコープ
  • 変わるべきは金融機関

要約全文を読む

4人のパネリストはトランジションファイナンスにおける金融機関の役割やリスク管理などについて語った。

重要な目利き力

清水氏は「膨大な投資資金を効率的に活用するには金融機関や投資家の目利き力が重要で、金融機関と対話しつつシナリオ分析およびリスク管理の高度化を進めたい」と指摘。

デザイン力も

増田氏は「私どもは2004年に環境格付け融資を世界に先駆けて始めており、そういう経験も踏まえてここ1、2年はトランジションファイナンスに力を入れている。企業のトランジションカーボンニュートラル達成に資するような数字の設定で知恵を働かせることや資金調達ニーズの中にトランジションローンをどう組み込むかといったデザイン力も非常に大事」と強調した。

中堅企業のスコープ

瀧氏は「最初の良いプロダクトが会計ソフトで、我々のような事業者に中堅企業におけるスコープが生まれてくる。担当者を置かなくても7、8割の精度で推計ができる。ベルマークのようなものを作ることもできる」などと話した。

変わるべきは金融機関

またブルーノ氏は「変わるべきは金融機関で脱炭素化に整合性を持たせなければならない」と言い、サプライチェーンのリスクとして資源の集中を挙げセキュリティーの問題や誰も取り残さないことの重要性に言及した。

パネリスト

日本政策投資銀行
常務執行役員

増田 真男

プロフィールをみる

電子決済等代行事業者協会
代表理事

瀧 俊雄

プロフィールをみる

ソシエテ・ジェネラル証券 代表取締役グループ・カントリー・ヘッド、ソシエテ・ジェネラル銀行 東京支店 支店長 日本における代表者

ブルーノ・ゴソーグ

プロフィールをみる

パネリスト 兼 モデレーター

日本銀行 理事

清水 季子

プロフィールをみる

パネルディスカッション➃16:45-17:25

資本市場サイドからのアプローチ

テキストで読む要約

  • 情報開示に基づく議論を
  • 企業は信念や価値観に基づき行動を
  • 投資家が求めるものを双方向で

要約全文を読む

3人のパネリストはトランジションファイナンスの活性化に向けた政策対応や現状認識などについて語った。

情報開示に基づく議論を

池田氏は「成果は出ているがデータ整備はスムーズとはいえない。情報開示の基準が定まればデータが広がりデザインもできる。金融機関への後押しや取り組みなさいというメッセージを金融庁が出すことも重要だ」と主張。今後の方向性については「経産省のロードマップを参照しながらどういうパスでネットゼロを達成するか。投資家とうまく対話し、それをベースにファイナンスを調達する流れをうまく作ること。それには情報開示に基づく議論が大事だ」と話した。

企業は信念や価値観に基づき行動を

今井氏は「ロードマップに沿ったルール作りや枠組み作りが進んできたが決まっていないものも多い。ルール変更はあるだろうが、企業は信念や価値観に基づき良いと思うことを躊躇なくやることだ。リスクが最小限になるよう官民共同で相談しながら取り組めるとありがたい」と訴えた。

投資家が求めるものを双方向で

また村上氏は「私どもは資本市場をより活性化させる立場かなと思っている。評価会社の評価レポートがあれば透明性が上がり投資家も安心できる。投資家が求めるものを発行体に理解してもらうことを双方向で行うことが大切」と述べた。

パネリスト

金融庁 チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサー

池田 賢志

プロフィールをみる

農林中央金庫 常務執行役員
グローバルバンキング統括責任者サステナビリティ共同責任者

今井 成人

プロフィールをみる

野村證券 執行役員
インベストメント・バンキング・プロダクト担当

村上 朋久

プロフィールをみる

モデレーター

東京証券取引所 取締役 専務執行役員

小沼 泰之

プロフィールをみる

総括17:30-17:50

東京国際金融機構 会長

中曽 宏

プロフィールをみる

テキストで読む要約

  • 日本の経験をアジアと共有すべし
  • 不断のイノベーションと金融支援
  • 中小企業にはデータ収集・分析
  • 鍵を握る情報開示
  • 実践に求められる融資とリスクの分担

要約全文を読む

今回は主要なテーマとして四つ取り上げ、それぞれについてパネルディスカッションを行い議論をいただいた。

日本の経験をアジアと共有すべし

最初のパネルでは、ダイベストメントからエンゲージメントへの移行の重要性や日本の経験をアジアと共有することの有用性が確認された。

不断のイノベーションと金融支援

2番目のパネルは、事業法人の立場から課題とか展望に焦点を当てた議論だった。事業法人はイノベーションを不断に追求する必要性があると同時に投資家あるいは金融機関は金融面から支えていくことが求められるとの指摘もいただいた。

中小企業にはデータ収集・分析

3番目のパネルでは、間接金融の提供者の立場から課題や展望に焦点をあてた。効率的なデータの収集や分析を通じて中小企業によるトランジションの取り組みを支援しうることへの理解が深まった。

鍵を握る情報開示

4番目のパネルでは、金融サービスの提供者と投資家の立場からの課題展望に焦点をあて情報開示の透明性、合理性が不可欠であるとの点も確認できた。

実践に求められる融資とリスクの分担

本日の議論を通じて幅広く共有されたポイントはクライメート・トランジションの実践にはステークホルダーに融資金とリスクの適切な分担が求められるという点である。官民双方の関係者が課題を密接に共有してそれぞれの特性に応じた役割を発揮する必要がある。

司会者

経済キャスター

鈴木 ともみ

プロフィールをみる
後援
金融庁
経済産業省
環境省
一般社団法人 全国銀行協会
一般社団法人 投資信託協会
日本証券業協会
一般社団法人 日本投資顧問業協会
公益社団法人 日本証券アナリスト協会
CFA Society Japan
JPX 株式会社日本取引所グループ 株式会社東京証券取引所
AIMA
JIAM
Fin City Tokyo